海部美和『パラダイス鎖国』(アスキー新書724円+税)4〜日本語で歌うロック論争の舞台裏
内田裕也ははっぴいえんどに対する疑問点についてこう述べている。
「歌詞とメロディのリズムというかね、日本語とロックとの結びつきに成功したといわれているけど、そうは思わない」「せっかく母国語で歌うんだから、もっとスッと入ってこなくちゃ」
どうも日本語の歌詞が明瞭でないということらしいのであるが、実際はそのあとの発言に本音が隠されているように思えた。
「ぼくは去年の『ニューミュージック・マガジン』の日本のロックの一位が岡林(筆者注:『私を断罪せよ』)で、今年ははっぴいえんどだ(筆者注:『はっぴいえんど』)と、そんなにURCのレコードがいいのか、われわれだって一生懸命やってんだ、と言いたくなるんだ」
この発言のあとすぐにミッキー・カーティス(『チュウ・チュウ・トレイン(amzonにもなし)』という本で履歴がわかる)から、「そんなこといいじゃないか。誰もお前が一生懸命やってないなんて、言ってやしないんだよ」とたしなめられているが、長年ロックで頑張ってきたのにも関わらず、ポッと出の岡林信康やはっぴいえんど(岡林のバックをやっていた)に賞をさらわれたことが相当悔しかったようである。問題の本質はどうやらそこにあると見た。
その当時を生きた人間としてハッキリ言うが、「シェキナ・ベイビー」でやってきた内田裕也より、岡林やはっぴいえんどの方が極めて新鮮であった。子どものケンカのような日本語のロック論争であるが、その当時は大まじめで語られていたのは確かである。
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