境真良『テレビ進化論 映像ビジネス覇権のゆくえ』(講談社現代新書720円+税)6〜内弁慶型産業
出版、映画、音楽、放送といった産業はポップカルチャー系の業種のように昨今出来たものではなくいずれも長年に渡る歴史を誇るものばかりであり、影響力も大きいこともあって社会的な制度とも無縁ではない。
これらの産業に共通しているのは再販制度や免許制度といった保護策によって手厚く護られてきたということである(映画はかつて現在の放送を併せたくらいの超強力メディアであり、その名残は著作権法で放送局が著作隣接権者であるのに対し映画会社が著作権者であることなどに散見できるが、その時代に勝ち得た既得権は大きい)。
そういう状況もあってか、それらの産業を支配するプレーヤーはなかなか海外へ目が向こうとしないようである。また内側にしか向いてない眼でつくられたコンテンツ(実はアニメもそうなのであるが)が中々海外で受容されないためか、どこもかなりの内弁慶型産業構造となっている。
これらの産業は現状どれも業績が頭打ち傾向にあり先行き不透明とされているが、その根本にはこの内弁慶型の産業構造があるからであろう。確かに国内市場だけを考えている限りどんな産業であっても将来に対して明るい希望は抱けない。
そして、これらの産業の中で内弁慶問題が象徴的に現れているのが放送であろう。その産業規模、国内におけるメディアとしての持ってる力の割には驚くほど海外に対する影響力がない。放送コンテンツを見ても大幅な輸入超過である。だがしかし、逆説的な物言いであるが、だからこそ放送局がコンテンツの未来を握っているとも言えるのである。
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