境真良『テレビ進化論 映像ビジネス覇権のゆくえ』(講談社現代新書720円+税)1〜政治家や官僚とコンテンツは相容れない
基本的には「放送と通信の融合」の行方について書かれてあるのだが、それはそれとして着目すべき視点が沢山あって教えられるところが多かった。境氏は元経産省の官僚でありながら、知材立国宣言以来、国是としてコンテンツ産業を経済の中心に据えようとした割に政策が遅々として進まないのは、「「娯楽の価値」を認められない官僚の心理傾向が、問題の奥底に潜んでいるように思える」と述べている。
まあ、実際当事者として働いていたのだからそのんへんのことは一番よくわかっているのであろう。エンタティンメント・コンテンツ一筋30年?の筆者としては全くその通りであると実感する。今世紀になるまでマンガやアニメが政治家や官僚の関心を持ったことなど一度もなかったであろうし(手塚治虫を国民栄誉賞に推薦した麻生さんがいるけど)、ずっとこの世界に身を置いて者としてもそれは肌で感じたことであった。
天下国家を語る(べき)官僚が趣味人の権化たるポップ・カルチャーに興味を持つはずもない。逆もまた真なりで、オタクが真剣に政治に興味を持つはずもない。国の看板を背負っている役人は本来本質的にオタクとは相容れないはずである。
書評ありがとうございました。
ただ一言。「国の看板を背負っている役人は本来本質的にオタクとは相容れないはずである。」とありますが、「そんなはずない」存在を15年もやっていると、反例あるやんけ、と言いたくなっちゃって。
個人的に一番悩むのは、こうしたポップの評価によってポップが変質してしまうことです。
混沌の喩え(荘子)は含蓄が深いです。
投稿情報: 境真良 | 2008/06/12 21:41
境さん、コメント有り難うございます。ご本人から頂けるとは恐縮です。確かに「相容れないと」決めつけることは出来ないと思います。
以下直接メールします。
投稿情報: 増田弘道 | 2008/06/13 08:36