『オタクはすでに死んでいる』岡田斗司夫(新潮新書680円税別)
なぜ日本にオタクが発生したのか
本書を読んでなるほどと思ったのは日本のオタク発生説についての論考である。要するに「なぜ、日本にはオタク文化が生まれたのか?」ということであるが、氏はそれについて以下のように述べている。
オタク文化というのは「大人になっても子どもの趣味をやめない」ということであり、それは日本の大人は子どもっぽい、日本の子ども文化が大人っぽいという二つの要素に支えられてきたということである。確かに大人文化と子ども文化が明確に分けられている国がほとんどである中で日本の子ども文化は異彩を放っている。だからこそ、今までディズニー風のCartoonしかなかったフランスにおけるグレンダイザー(ゴルドラック)の衝撃は大きく視聴率100%といわれるほどの熱狂を生み出した。
もうひとつ、氏が述べるところのオタク文化を生み出した特殊性は「お小遣い」であるという。世界的に見て子どもに小遣いを与える習慣があるのは一部の東アジア圏のみで、それ以外はプレゼントさせるか自分で稼ぐしかない。この日本の特殊事情が「自分の趣味に対する自己決定権」を与え、オタク文化を育てる重要な要素となったと指摘している。確かにお年玉をたんまり貰える子どもは多く、かつ少子化もあって我々の時代より遙かに今の子どもの方が裕福であることは伺える。
さらに、最近自称も含めてオタクが富みに多くなった理由について90年代以降の不況が大きな影響を与えていると氏は述べる。今日より明日が豊かになるという歴史観が困難になった現在、「無理して大人になるよりも、楽して子供っぽく得して生きる」という道を選択した結果オタクの総人口が増えてしまったのである。つまり、先行きの不透明感が大人になることを忌避させているのだ。しかし、これは単に若者だけのことではなく日本の「全世代・全階層」も「無意識に求めている行き方」になったのである。
確かに人生五十年の時代からすると現代人は年齢の割に若い。いい意味でも悪い意味でも世界中で一番子どもっぽい大人がいる国であろう。おそらくそれは半世紀以上に渡って享受してきた平和の中で「死」の意味を考えられなくなった結果なのではないだろうか。
This is a really intelilegnt way to answer the question.
投稿情報: Ahmed | 2012/05/17 21:22