『フリーコピーの経済学』新宅純二郎・柳川範之編(日本経済新聞出版社2,800円税別)2
コピーが育てた音楽産業
本書ではフリーコピーがどのようにコンテンツ産業に影響を与えるかについて非常にダイレクトに述べられている。そしてフリーコンテンツこそがエンタティンメント産業を成長させて来たと結論づける。その最たる例として挙げられているのが音楽だ。
音楽産業の発展の歴史は実はコピーの広がりの歴史でもあった。まずレコードの登場。実演者はレコードの普及によって演奏の場は失われると主張したが実際は登場の機会が増えた。そして、レコードに反対の異を唱える人間はいなくなった。
ラジオの出現に対しても当初レコード産業界は激しく反対したが、すぐにレコードのプロモーションになることがわかって極めて密接な関係を築くようになる。選曲権のあるラジオのDJに対して多額の賄賂を渡すようになったのは他ならぬレコード会社である。
次いでテレビの登場。その影響力はラジオの比ではなくレコード会社の目はいつの間にかそちらに向けられるようになった。アメリカなら「エド・サリバンショー」、日本なら「夜のヒットスタジオ」などは、その番組に登場すると一夜にしてビッグスターになるミュージシャンを輩出させた。
テープというメディアはコピーという行為を初めて一般的なものにした。そして、ウォークマンが現れ音楽コピーはライフスタイルの中に根づいた。このように相次ぐコピーメディアの出現で音楽産業は大きく発展してきた。
そして、コピーという行為はデジタル&インターネット社会なって格段に容易になったが、果たしてそれは過去の例に漏れずまた音楽に繁栄をもたらすのであろうか?あるいは衰退をもたらすのか?
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