アニメ夏興行特集4『崖の上のポニョ』
ポ〜ニョポ〜ニョポ〜ニョ魚の子、をつくったジブリの真意
今回の宮崎アニメは子ども向けということが明確であるため観客層が限られので興行的な苦戦が予測されていた。しかしながら、44日間興収で127.2億円、これは『千と千尋の神隠し』ほどではないが、『もののけ姫』『ハウルの動く城』を上回るペースであるという。
興業ランクも8月一杯までは一位を維持、9月に入ってハンコック、二十世紀少年の後塵を拝したが、翌週2位に再浮上した。おそらく上位は入れ替われどこのまましばらくはベスト5に長く滞留するものと思われる。
しかし、なぜ今回の宮崎アニメは明快に子ども向けてつくられたのであろうか。もちろん宮崎氏の出自が東映動画でありそのアニメづくりの原点に子ども向けアニメがあるということを考えれば何の不思議もないことである。原点に戻ったと一言言えば済む問題であろうが事はそう簡単でないように思える。
1988年のトトロ以来、宮崎氏はハッキリとわかる形での子ども(ファミリー)向け作品はつくっていない。さらに言えば正確に子ども向けてつくられたという意味ではトトロとポニョしがないのではないか。そして、この点におそらく鈴木プロデューサーの深慮遠謀があるのだと思う。
鈴木プロデューサーの深慮遠謀というと何やら難しそうな気がするかも知れないが、要は未来を見据えた戦略、つまり自分たちがいなくなったあとのジブリを真剣に考えはじめたということであろう。ポスト高畑、ポスト宮崎、ポスト鈴木ということである。そう考えると宮崎氏の子息をジブリの監督にしたことも、ディズニーから新社長を迎え入れたことも、「西ジブリ」を開設したことも、ポニョをつくったことも合点が行く。
で、何故ポニョがなのかについては要するにそのビジネス性にあるのだろう。もののけ、千と千尋などの大ヒットは凄まじい瞬間風速をもたらすがビジネス的な継続性は意外と乏しいのではないだろうか。おそらくジブリの屋台骨を支えているのは安定したキャラクター性を誇るトトロなのだと思う。その意味でポニョはスタジオに経済的な均衡をもたらす第二のトトロなのであろう。
ポニョの意味は今までスタジオの存続など意味がないと考えていた人たちが真剣に先のことも考えはじめたということなのだと思う。であればスタジオの論理としては本当はトトロ2をやるべきなのであるのだろうが、そうならないところがジブリの真骨頂なのである。
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