『宮崎アニメは、なぜ当たる スピルバーグを超えた理由』(斉藤守彦/朝日新書700円税別)
宮崎作品とスピルバーグ作品の比較書
7月出版という時期を考えると一種の「ポニョ本」であろうが、タイトルに引かれて思わず買ってしまった。いわゆる作品を語る宮崎本が多い中でこの本はビジネスについて触れていると思ったからである。
で、実際読んでみたら、トトロ以降の宮崎作品とスピルバーグ作品の興業成績を中心に述べられた、何というか映画業界本であった。確かに日本において宮崎作品と比肩しうる力量を持った個性はスピルバーグくらいしかいない。
ということで、それで宮崎アニメがなぜ当たり、なぜスピルバーグを超えたのかその理由がわかったかというと、予測したとおりであったがそんなことはなかった(但しデータは役に立ちます)。もちろん、色々な推論が書かれてあるのだが、どれも今ひとつ腑に落ちる説得力を持たない。
まあ、なぜ宮崎アニメがこれほど日本国民の支持を受けたのかをもし解き明かせたらそれは大変なことでそれがわかれば苦労しない。ついでに、なぜ宮崎アニメが海外で日本ほど成績が振るわないかについてのヒントも得られるはずであろう。
『もののけ姫』がなぜ突然歴代興業記録の1位になったのか、それは敗戦の呪縛から解放されつつあったというその当時の時代背景と無縁ではない。封印されていた神道的なるものを求める心と同期しなければ「国民映画」とはなり得なかったであろう。いずれにせよ、時代精神との関わりを抜きにして「宮崎アニメは、なぜ当たる」かを解き明かすことは出来ないはずである。
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