『折り返し点1997〜2008』宮崎駿(岩波書店2,700円税別)
まだまだ『到達点』ではない
ポニョ公開記念企画本?の頂点とも言えるのがこの『折り返し点1997〜2008』である。以前徳間書店から出版した『出発点1979年〜1996年』の続編ともいえる書籍であるが、なぜか今回は岩波書店から出ることになったようである。鈴木敏夫氏の『仕事道楽』も岩波からの出版であるからして、何か関係があるかも知れないがただの偶然かも知れない。
あとがきで宮崎氏が、「この本を出すことは、ぼくの本意ではありません」と書いているが(述べているが)、それはこの本の原稿のほとんどがインタビューや対談など話したことを元にした聞き書き、つまり口述筆記になっているからであろう。実はそれが『出発点1979年〜1996年』と比べて大きく違っているなと私が思った点である。
同じ版型の『出発点1979年〜1996年』が580ページあるのに対し、今回の本は512ページであるが、その枚数の多寡もあるが密度が違っている。前作は自ら書いた原稿が多いというせいかも知れないが、ある種の情熱、あるいは情念というべきものが感じられるのである。
『折り返し点1997〜2008』での宮崎氏は相変わらず環境指向?の不機嫌なオヤジさんではあるが、以前からは格段に透明感?が増したように思える。それは説明できないモヤモヤした情念や理不尽な怒りであったりするのだが、そういったものが感じられなくなった。まあ、丸くなったとも言えるのかも知れないがそう思ったのは確かだ。
さて、次著『到達点』が書かれるのは何時であろうか?
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