アニメと音楽のビジネス関係(4)〜ディズニーと映画音楽
アニメビジネスと音楽の関係性を考えるなら一旦時計を昔に巻き戻さなければならない。それは音楽に限ったことではないがアニメビジネスのほとんどのルーツはディズニーに見い出せるからである。ある意味それは世界最初のトーキーアニメである『蒸気船ウィリー』(1928年)からはじまったとも言えるであろう。
そのディズニーが初期に好んでつかった楽曲はクラッシックであった。これには高尚さを出したいという狙いがあったが、その裏には著作権使用料が不要という事情も隠されていたようだ。そんなディズニーが1930年代に入って製作したシリーシンフォニーシリーズは映画史上、いや音楽史上におけるエポックメイキングな作品となった。ここから「映画音楽ビジネス」がはじまるのである。
その中でも傑出しているのは『狼なんてこわくない』である。『三匹の子ぶた』(1933年)に登場したこの歌は大不況時代にあったアメリカに光をもたらすとして空前の大ヒットとなった。狼を不況に例えたこの歌は「第二の国歌」と呼ばれるほど人口に膾炙し、当時全米中のラジオからこの曲が途絶える日はなかった。
実は、この時代におけるディズニーの唯一のライバルとも言えるフライシャーも音楽に対しては積極的で、当時最先端であったジャズを大胆に取り入れていた。フライシャーが代表作ベティ・ブープシリーズに起用したミュージシャンはキャブ・キャロウェイ、ルイ・アームストロングなど錚々たる面々である。
しかしながら、1930年代に入って映画に対する表現規制が厳しくなる中、セクシュアルな要素がたっぷりなベティブープに対する圧力が高まっていく(性的要素一杯の大人向けアニメにおいてもその元祖はアメリカであった)。そんな状況において最後に勝利を勝ち取ったのはあくまで健全なアニメーションを標榜する保守的なディズニーであった。
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