手塚治虫の天賦の才を支えた資質②〈体力〉その2
消化器官と食欲
心肺機能と並んで優れていたのは手塚の消化器官である。というか、早い話食欲が凄かった。食が細いとスポーツ界では大成できないと言われるが、一般的にタフな人は食欲も凄い。手塚もまさにその典型であった。
「手塚先生は大変な大食漢で、とにかく、しょっちゅう、何かを食べていました。それもボリュームのある脂っこい料理を、もの凄い量、食べるんです」「手塚先生がお蕎麦を食べているところなど、まず見たことがありません。お好みのメニューはカツ丼、天丼、チャーハンと言ったところ」「ガスパッチョという有名なスペインの野菜スープが出たのですが、大どんぶりのような容器になみなみと注がれてきました。並みの日本人なら一杯を飲み干すのがやっと。もうお腹一杯です。それを先生は、おかわりしたうえ、ぺろりと平らげてしまったのです」
(『マンガの神様』鈴木光昭/白泉社)
「(*筆者注:アメリカのホテルの朝食で)カリカリベーコンとポテトの山盛り、三つ目の目玉焼き、ビックマック大のパン二個、赤ちゃんの頭大のアップルパイを、先生は小振りのジョッキに注がれたオレンジジュースを片手に平らげていた」
(『手塚治虫全史』より元朝日ソノラマ手塚治虫担当松岡博治/秋田書店)
手塚はこの旺盛な食欲を中年期以降も維持していたが、これこそ無限とも思われたエネルギーの源泉であったのだろう。寝る間もなく仕事を続けていた手塚はもちろん運動するヒマもなかった。そういう状況にあっても食欲を維持していけるということは余程消化器官が丈夫だったものと思われる。
コメント