Vol.72〜第一部手塚治虫とマンガ〜第二章手塚治虫成功の秘密③
物語伝達の最適メディア化
マンガからゲームへ?
この物語を伝達する器としてマンガが最適なのは相変わらずであるが、最近はゲームがポストマンガの存在になりつつあるという指摘が多い。
もちろん、現在でもマンガがアニメやゲームのみならずテレビ番組や映画に対する圧倒的な原作供給源であることを見れば、日本のポップカルチャーの中心に位置しているのは間違いないが、最近電車の中でマンガ雑誌を読んでいる人間を見かけなったことや、1996年をピークとして年々その売上を減らしているという現実、また実際に最近ではゲーム原作のアニメが増えているといった状況を考えると次第にゲーム業界に人材が移行しつつあるのは確かなようである。
実はこの現象は石ノ森章太郎が自著『絆』(1998年出版であるから既に10年以上前である)で「かつてならきっとマンガ家になっただろうなという人たちがゲーム業界に集結しているように思われる」述べているように、かなり以前から見られたものである。
その裏には、学校を卒業していきなり身分保障のないフリーランス(あるいは低賃金のアシスタント)として出発しなければならないマンガ家と企業への就職が前提のゲームクリエーターの生活格差が存在するためと思われるが、石ノ森が「いつの時代にも時の勢いを得るジャンルというのがあって、僕らのマンガ業界が追い風を受けていた」ように現在はゲームがそうした存在となっているのであろう。
人材に事欠かなかったマンガ業界もそろそろマンガ家の経済環境を整備を真剣に考えリクルートをしなければならない時期に入っているのは間違いない。
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