第二部手塚治虫とアニメ
2−2海外を席巻するアニメパワー
ハリウッド映画とアニメの関係
ハリウッド映画に影響を与えた日本のコンテンツといえば、今までは圧倒的に黒澤明の作品であった。それは、『七人の侍』や『用心棒』がハリウッドやイタリアでリメイクされたことや、『影武者』のプロデュースをルーカスやコッポラといった大物監督が申し出たことでもよくわかる。
しかし、現在はむしろアニメの影響が大きいのである。その中でも有名なのは、ウォシャウスキー兄弟が監督した『マトリックス』(1999年)まつわる逸話であろう。既に有名な話ではあるがウォシャウスキー兄弟は押井守の『攻殻機動隊』(1995年)を見て衝撃を受け、これこそ実写で自分たちがつくりたかった映画であると公言している。ジェームズ・キャメロンやティム・バートンなどアニメ好きなハリウッドの監督は多いがこれほど率直にその影響が語られるのも珍しい。
実は日本のアニメの影響を受けたと見られるハリウッド映画は意外と古くからある。広く知られているのは『ミクロの決死圏』(1966年/二十世紀フォックス)で、1963年アメリカで放映されていた『鉄腕アトム』(英題『ASTRO BOY』)の中にあった「細菌部隊」というエピソードからテーマが取られたたものであると手塚治虫は述べている。
また、かの『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』(1980年)で巨大戦艦が宇宙に並ぶスケール感あふれるシーンは『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)を参考にしたとジョージ・ルーカス自身がフランスの雑誌へのインタビューで語っている。
さらに、『トップガン』(1986年)や『インデペンデンス・デイ』(1996年公開)などの作品にも、日本の『超時空要塞マクロス』(1982年)をはじめとするロボットアニメの影響が随所に垣間見られる。
もちろん、日本のアニメもハリウッド映画から実に多くの影響を受けている。ディズニー作品はもちろん、『2001年宇宙の旅』や『ブレードランナー』などの実写映画から受けた影響を日本のアニメクリエーター達は自分なりに咀嚼し、新しい映像表現として再提示しているのだが、その意味では日本のアニメ監督とハリウッドの監督達が互いに作品でキャッチボールし合うという関係にあると言えるであろう。
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