第二部手塚治虫とアニメ
2−3 アメリカでブレイク
日本製アニメがアメリカのアニメ産業に与えた影響
80年代以降アメリカに浸透しはじめた日本のアニメは様々な面でアメリカのアニメ産業にも影響を及ぼしつつある。
まず、挙げられるが内容面での影響。例えば日本の眼の大きさ。私が2000年に参加したニューヨークアニメ映画祭で行われたセミナーで、『美少女戦士セーラームーン』の演出で知られる幾原邦彦監督に対しアメリカ人の女性インタビュアーが真っ先に尋ねたのが、「日本のアニメで出てくるキャラクターはなぜあんなに眼が大きいのか」というものであった。
幾原監督は苦笑いしながらも手塚治虫にそのルーツを求める解説を展開していたが、不思議なことに今ではそういう議論は全くなくなってしまった。なぜなら、すでにハリウッド製アニメキャラの「眼」も十分大きくなってしまったからである。
例えば、『モンスターズ・インク』の主人公の女の子はそれまでアメリカのアニメになかったほど眼が大きい。制作したピクサーの創立者の一人であるジョン・ラセターは、宮崎アニメの大ファンとしても知られているが、彼に限らず1993年の『ライオン・キング』以降、明らかに日本のアニメから触発を受けたと思われるキャラクターやシーンが度々アメリカのアニメに登場するようになった。
最近では日本人の人気デュオ「パフィー」をキャラクターにした「ハイ ハイ パフィー アミユミ」というアニメ番組まであり、それが全米で視聴率一位になったほどである。そして、日本の影響は製作費の面においても現れてきた。
アメリカではアニメは動きで見せるという伝統があり、その目安として動画枚数の多寡が計られる。それがクオリティの目安となっており、TVアニメでも日本の3〜4倍の動画量(通常1万枚以上)が最低限必要とされていた。
ところが、日本製アニメの標準動画量であるポケモンの大ヒットにより、動画枚数(動き)の多さが必ずしもクオリティ=ヒットの最低条件を保証するものではないことが証明されたため、かつては日本の3〜5倍もあった製作費が次第に低減されるという現象が起きた。
アメリカの現場制作会社にしてみればたまらないものがあるだろうが、このように日本のアニメは様々な面でアメリカに影響を与えるようになったのである。
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