〈手塚治虫とアニメ〉アニメの繁栄を築いた手塚治虫
手塚治虫以降のアニメ11〜1960年代に出来上がっていた製作会社の枠組み
ここで特筆すべきことは、すでに60年代ですでに現在におけるアニメ製作業界の枠組みが出来上がっていたということであろう。つまり、現在アニメを製作している主要な会社のルーツはこの時代にあったということである。
東映動画(東映アニメーション)、東京ムービー(トムス・エンタティンメント)、TCJ(エイケン)、竜の子プロダクション(現タツノコプロ)などは現在もそのまま製作・制作を続けているが、そこや虫プロから派生した会社を併せると、現在のアニメ製作主要各社の過半数以上の製作・制作会社が60年代のTVアニメ勃興期に出来た会社にルーツを持っている。
〈TVアニメ勃興期に生まれた基幹製作会社、及びそこから派生した主なアニメ関連企業〉
■ 東映動画(TVアニメ以前からの別格的な存在であるがTVアニメの製作を主導した)
*シンエイ動画/1965年、東映動画で活躍したアニメーター故楠部大吉郎氏が創立したAプロが母体。1967年にシンエイ(新Aという意味)動画となる。(『ドラえもん』『忍者ハットリくん』『美味しんぼ』『笑うせぇるすまん』『クレヨンしんちゃん』)
*スタジオジブリ/1985年、徳間書店の出資で誕生。創立者の高畑勲氏は創立時から、宮崎駿氏は1963年代に東映動画に入社共に多くのアニメを手がけた。(『風の谷のナウシカ』『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ゲド戦記』)
■ 虫プロ
* サンライズ/1972年、虫プロ営業系の人間を中心に創立。『鉄腕アトム』の遺伝子を継いだガンダムを世に送り出した。(『機動戦士ガンダム』『装甲騎兵ボトムズ』『カウボーイビバップ』『ケロロ軍曹』『叛逆のコードギアス』)
*マッドハウス/1972年、虫プロ制作部の演出の出崎統、アニメーターの杉野昭夫、文芸の丸山正雄などが中心になって設立。虫プロの作品指向の遺伝子を受け継いだ。(『幻魔大戦』『カードキャプターさくら』『メトロポリス』『モンスター』『時をかける少女』『パプリカ』)
*グループ・タック/1968年、音響の田代敦已、演出の杉井ギサブローなどが中心となって設立された会社。(『まんが日本昔ばなし』『タッチ』『紫式部 源氏物語』『あらしのよるに』
■ 竜の子プロダクション(1962年設立)
*スタジオぴえろ/虫プロ在籍経験もあるアニメーター・演出家の布川郁司が竜の子プロを経て仲間と設立した会社。ゴールデンタイムにおいて多くのヒット作品を手がけている。(『ニルスのふしぎな旅』『うる星やつら』『NARURO』『BLEACH』『BLUE DRAGON』)
*葦プロダクション/竜の子でCM制作や版権営業の仕事をしていた佐藤俊彦、加藤博らが中心となって設立された。オリジナル作品を多く手がけている。(『マクロス7』『H2』『アキハバラ電脳組』『獣装機攻ダンクーガノヴァ』)
*プロダクションIG/竜の子の制作石川光久とアニメーターの後藤隆幸が設立した会社。押井守の作品をはじめとして意欲的なアニメ制作に挑戦している。(『機動警察パトレーバー』『BLOOD』『人狼』『攻殻機動隊』『イノセンス』)
■東京ムービー(1963年設立)
*テレコム・コミュニケーション/東京ムービーの創立者である藤岡豊が海外との合作のために設立した制作会社。一次、高畑勲、宮崎駿などが在籍したこともある作品指向の会社。(『ルパン三世 カリオストロの城』『じゃりン子チエ』『双恋』
■ TCJ(現エイケン/TCJの映画部として1963年よりアニメ製作開始)
* 瑞鷹エンタープライズ/TCJに在籍していた企画と営業担当の高橋茂人が1969年に独立してつくった制作会社。子ども向けの良心的な作品を多く手がけた。(現ズイヨー。『ムーミン』『アルプスの少女ハイジ』)
*日本アニメーション/瑞鷹エンタープライズの制作部門が1975年に独立して生まれた会社。瑞鷹同様、子ども向けの名作を多く制作した。(『フランダースの犬』『みつばちマーヤの冒険』『ちびまる子ちゃん』)
以上であるが、派生会社からさらに生まれた会社も数多くあり、やはり日本のアニメのルーツが60年代のTVアニメ興隆期にあるという事実を改めて思わざるを得ない。ある意味で日本のアニメ製作が未だに“1960年体制”を維持し続けていることを意味していると言ってよいであろう。
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