『封印作品の憂鬱』(安藤健二/洋泉社1,300円税別)
日テレ版ドラえもんとウルトラマン問題
本書で取り上げられている封印作品は日テレ版ドラえもん、タイとの合作『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』、そしてマンガ版『涼宮ハルヒの憂鬱』の三作品である。
まず、ドラえもんである。1973年に放送が開始されていた日テレ版ドラえもんがなぜ2クールで放送を終了してしまったのかこの本でその理由がわかった。
余り人気が出なかった理由のひとつにドラえもんを担当した富田耕生の違和感が上げられているが、総体的に制作会社である日本テレビ動画に色々と問題があったようだ。消滅してしまった会社なのでほとんど資料が残っていないようだが利権問題が根底にあったようだ。
ドラえもんのビジネス構造は製作委員会方式になる前のスタンダードなものである。原作者、出版社、テレビ局、制作会社、代理店からなる「委員会」を組成し各々の役割を果たす。現在の製作委員会と違うのは制作会社が映像著作権を保有するという点であるが機能的にはほぼ同じである。
ウルトラマンを巡る円谷プロとタイのチャイヨー社の争いであるが、この本を読む限りどうも円谷プロの分が悪いように見受けられる。かなり前から経営体質に問題があったようで、その結果がチャイヨー社に対する敗訴、TYOへの売却であろう。詳しくは本書を読んで貰いたいが老舗ほど経営体質に気をつけなければならないというひとつの証左であろう。
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