『ショートフィルム』(別所哲也/集英社新書800円税別)
アニメの原点もショートフィルムだった
別所哲也氏がショートフィルムのフェスティバルを主宰していることは知っていたが、この本を読んでその全貌が理解できた。結構大きなイベントになっているんですね。今年は見に行こう。
映像の原点はニケル・オデオンの当時を語るまでもなくショートフィルムにある。そして、アニメも長編実写映画の添え物としてずいぶん長い間ショートフィルムというフォーマットを取ってきた。世界初の長編劇場アニメ『白雪姫』で一本立ちしたものの、その後も長らく主流は7〜8分のショートアニメなのである。
日本もその例外に漏れず戦時中の作品を除きほとんどがショートアニメであったが、その壁を打ち破ったのが大川博率いる東映動画であった。だが、それから10年を待たずしてテレビアニメの時代が訪れアニメの生産性は飛躍的に上がりアニメのフォーマットの主流は30分か劇場アニメサイズ(80分〜120分)、あるいはそれに準ずるサイズ(OVAなど)となった。
しかし、デジタル技術の広がりと共にショートアニメの時代がまた訪れた。デジタル技術がもたらしたイノベーションによって音楽と同じように一人でアニメがつくれるようになったからだ。労働集約型のくびきから逃れたクリエーターは思い思いにアニメを創作する。だが、長編をつくるまでの生産性はまだ勝ち得ていない。
ショートアニメとしての完成度を高めるのも良いだろうが、長編作品、あるいはシリーズのデモとしてつくるという考え方もある。欧米では劇場アニメにしてもシリーズものにしても最初にデモをつくってスポンサーなどにプレゼンする(日本は原作マンガがあればいいので楽なのだが・・・)。このビジネス手法を確立させればスタジオに所属しない個人クリエーターであっても劇場アニメやシリーズをつくれる可能性が出てくる。
日本にも広島国際アニメーションフェスティバルという有名なショートアニメのフェスティバルがあるが、なかなか商業的な発展には結びつかない部分がある(そういう主旨の映画祭であることはわかってはいるが)。これはこれで存在価値は十分あるのだろうが、デジタルクリエーターが続々と誕生しつつある現在、それをビジネスへとトランスファーする機能が求められている。
実際、そうした機能を実際持つ企業がポツポツと出はじめている。そのさきがけがコミックウェーブであり、動画革命やディレクションズといった動画インディーズである。音楽を見てもわかるように、自社で育成しきれない才能をメジャーレーベルはインディーズに求める。アニメも果たしてそういった時代が訪れるであろうか。
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