『マンガ進化論』3(中野晴行/P-Vine BOOKS1,600円)
強力な原作者パワー
映像化権と映像の二次利用権は区別して考えるべきである。もちろん、両方込みで払いきりの場合(買取by out)のケースもあるが一般的には分けて考えられている。もともと映画しかウィンドウがなかった時代には二次利用権などなかったので原作者は原作料を受け取った時点でビジネスは完結していたのだが時代が下がり、中には興行収入BOX OFFICEに原作使用料が連動する原作者(あるいは脚本家、監督、俳優)が現れはじめた。
ただし、BOX OFFICE(興行収入)に連動して収入が入る原作者はかつてのステーブン・キングなど、必ずヒットが予測できる超強力な人間だけである。そんなパワーを持つのは世界中でも何人もいないであろう(ハリポタ原作者クラスですね)。従って、中野さんが言うところの印税制云々はビデオ誕生以降のことを指すのであろう。
現在二次利用権料(DVD、テレビオンエアー、海外販売)に関しては買取の場合を除き売上に連動した印税制となっている。その料率については日本文藝家協会のHPを見ればわかるが(ここに入会していなくても大概同様の料率を得られる場合が多い)比較的公知のものである。なので、その辺の構造はもっと説明した方が宜しいのではないかと思う。
次に、本著で原作者が「(増田注:原作の)内容や設定が変えられても文句ひとつ言えなかった」とあるが、逆に映像を製作する側からみたら「原作者様」という感じが強いのであるのだが。著作権法的に見ても、二次翻案物・二次著作物についても原作者(と脚本家。映画のために書き下ろされた脚本であってもそれは一次著作物。キャンディ・キャンディは原作が一次著作物、マンガがその翻案という判決だった)は強力な権利を持っている。
実際、アニメ製作の場合でも、脚本からキャラクター、絵コンテ、そして実際の上がりまで悉く口を挟む原作者は結構いる(マンガ家さんが多いですが)。もちろん、ただ単にコメントするだけではなく直しが伴う場合がほとんどである。これは著作権法で制度的に認められている権利なので製作としても如何ともし難いのである。
もちろん、この権利(著作人格権の同一性保持権)を行使するかしないかはご本人の自由なので、何も言わない原作者さんももちろんいる。しかし、一般的に製作サイドから見ると原作者は泣く子と地頭の「原作者様」なのである。だから中野さんが言われている様に「承諾権」がないということは有り得ない。おそらく本人にその知識がない、あるいは行使しない、あるいは契約で制限されているの何れではないか。
ともかく見所はたくさんの本である。あとがきでマンガ家&評論家の竹熊さんが、「(増田注:マンガ)雑誌は版元も赤字で、単行本で元をとるというビジネスモデルそのものが、おそらく限界なのだ」と書いているが、これは「テレビは製作委員会も赤字で、DVDで元をとるというビジネスモデルそのものが、おそらく限界なのだ」と言い換えてもよいかも知れない。
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