『小説手塚学校1 〜テレビアニメ誕生〜』
皆河有伽(09年6月/講談社/税別980円)
立体的にアニメ創立期を伺い知ることが出来る本
ということで、また手塚本であります。生誕80周年はあったにせよネタが尽きないでありますな(いまケロロ軍曹を見ていたせいであります)。
なるほど小説仕立てにすると説得力があるものだ。既知のことでも何だか新鮮に見えてくる。それにしてもよく調べたものである。手塚治虫はもちろんのこと、アニメビジネス研究にも欠かせない一冊である。
クリエーターとしての手塚治虫が偉大であったのは論をまたないが、多くの人材を生んだことにおいても尋常ならぬ功績がある。トキワ荘や虫プロは日本のマンガ・アニメ産業を支えることになる才能を輩出させた学校であり、それが後に手塚スクール(学派)となった(まあ、日本のマンガ家、アニメ人は何らかの形で手塚の影響を受けているチルドレンではありますが)。
手塚に関することもさることながら、その他アニメの歴史を伺い知る上で情報が多々ある。例えば昭和32年に「日本に及んだ漫画映画熱」という、ちょっとしたブームがあったということ。ただし、これはアメリカの下請制作によって起こったというものであるらしい。
本書は手塚治虫が生まれ日本で本格的なアニメ(漫画映画)ブームがスタートするまでの記述である。東映動画を含めアニメ維新前夜の様相をこの本から感じ取ってほしい。
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