企業ヒヤリング2〜デジタルを巡る業界変動の可能性
人材育成との本題は直接的な関係はないが、今回のヒヤリングで感じたのは美術・背景制作の工程におけるデジタル化である。何となく予感はしていたが想像以上のスピードで進んでおり、あと2〜3年で美術制作の標準的なフォーマットがデジタルとなってしまうのではないかと思えた。
音楽の世界では80年代初期にデジタル化の波が起こり、90年代からはほぼ「打ち込み」と呼ばれるコンピュータで音楽を制作するDTM(ディスク・トップ・ミュージック)が主流となった。そのため、制作工程、予算、職種などの分野で劇的な変化が起こった。
音楽制作が容易、かつ安価になり参入の障壁が限りなく低くなった。楽器を弾けなくても、作曲の方法を知らなくても音楽を作れる。夢の様な世界が顕現したのである。とは言え、それで相対的にレベルが上がったのは確かであるが、アナログ時代に比べ劇的にクオリティの高い音楽が増えたかと言えば決してそうではない。
仕上からはじまり、撮影へと広がったデジタル化の波は次第に上部工程へ押し寄せつつある。美術の次にその波が来るのは間違いなく作画工程であろう。実際、鉛筆に変わりデジタルペン(ペンタブレット)で描くことを新人に義務付けている会社もある。
もし、作画でもペンタブレットで描くことが標準となれば、アニメ制作の工程がほぼデジタル化され大きなアニメ業界に大きな変化が訪れるであろう。それは制作現場のみならず経営環境にも大きな影響を与えるはずである。その意味ではデジタルとどう向き合うかが今後のアニメ制作における試金石になるのかも知れない。
次回から、いよいよスタジオヒヤリングである。