企業ヒヤリング3〜Vol.1テレコム・アニメーションフィルム
最初にヒャリングに訪れたのはテレコム・アニメーションであり、社長の竹内さんにはアンケートをはじめ実に多くの示唆を頂いた。
【選定理由】
アニメの人材教育については定評がある会社。東映動画に在籍していた月岡貞夫、大塚康生によって(特に顧問を務めている大塚康生)によって確立されたメソッドが現在でも引き継がれていおり、おそらく人材教育に一番熱心な会社のひとつであると思われる。実際、30年以上に渡る実績の中で輩出した人材は数多く、アニメーターの中では「名門」として位置づけられている。
【企業概要】
1)所在地:三鷹市
2)設立:1975年
3)設立の経緯:東京ムービー(現:株式会社トムス・エンタテインメント 東京ムービー事業本部)の関連会社(制作・作画部門)として発足する。創業者である藤岡豊がウィンザー・マッケイの『リトル・ニモ』をフル・アニメーションで制作するために設立
4)資本金:9,800万
5)従業員:64名
6)属性:準元請
【人材育成】
1)採用状況
毎年採用。また必要に応じても募集をかけている。
2)募集方法:HPのみ。人数は年度によって異なる。0名のこともあるが動画中心に4〜6名を採用。HPだけの募集でもリクルートに困ることはない。
3)人材傾向
結果的に専門学校が多いが、最近は東京工芸大学出身の人間が比較的優秀という評価があった
4)採用試験
基礎的な知識や技術が問われるのは当然だが、その他にも独自に試験方法を考えている。例えば、話した事を書き取らせる問題。単純な事に思えるが出来ない人間が多い。要するに人の話を聞いてないという事。コミュニケーション能力の基本が出来ていない。他にも箸で豆をつまむなど毎年工夫を凝らした問題を考えている
5)給与
研修期間は住宅・交通費と作業手当支給((これが全員に共通する「基本給」でもある)。3ヶ月の研修期間が過ぎると動画と仕上げに関しては単価制度になり枚数出来高で給与計算がなされる。社会保険有
6)研修ポリシー
テレコムは1979年に入社した大塚康生がアニメーターに対し行っていた、いわゆる「大塚塾」以来の伝統があり、完成された教育システムがある。同時にデジタルの時代となり、それによって必要とされる技術だけではなく業務区分も変わりつつある。それに対し、例えば動画職には鉛筆ではなくデジタル・ペンで作業させるようにしている(原画は鉛筆)。こうすると、描いてる画がディスプレイに表示されるので指導・指摘がしやすくなった結果、教育効果が高まった(作業効率も20%アップした)。このように、どうすればスキルが上がり作業効率が高まるのかについては常に考えている。
過去の経験からして教育なくして人は育たない。また、本人の自覚なくして最終的な向上はないのも事実である。最近感じるのはスタジオを経験しているクリエーターが少なくなったためだと思うが(昔はまずスタジオに所属するものだったが最近は最初からフリーの人間も多い)、教わった経験、勉強するという経験がないケースが見受けられる(極端な話、口の利き方すら知らない)。.これでは自己開発そのものが出来ない。これにはデジタルの時代になって、一人でアニメをつくれるようになったことも影響しているが、共同作業が基本のアニメ制作においてコミュニケーションすら出来ないというのは厳しい。ゆとり教育の弊害ではないか。自己主張はするが責任は取らない。
7)研修内容
先輩のアニメーターや仕上などが指導者となって教える。まずコンピュータの使い方から教える。そして、月々の到達点を定めそれをこなせるかどうかで進捗状況を計っている
8)キャリアアップ
・ 動画に関しては年に2回程度の目安で試験を行っている。1年以上の経験と任意の3ヶ月間の動画枚数トータル1,400枚以上が試験資格。それをクリヤーすると原画試験が受けられる。パスすればOJTの原画職となる。
・ その後はキャリアを積み上げて作画監督、キャラクターデザイン、演出といった業務にアップする。美術は背景見習い、背景、美術監督。色彩検査、色彩設定、特効、CG、撮影に関してはまず仕上で採用。その後、色彩検査、色彩設定、特効、CG、撮影というキャリアが控えている
9)資格制度
・ 二つ必要だと思う。ひとつは新卒レベルの人間が挑む登竜門として。最低減の知識を持っているということでスタジオが採用する際の目安となるだろう
・もうひとつは、現在アニメを教えている学校の教師に対して付与する資格制度。アニメーターを送り込むためのものではなく、学校とよく話し合った上での教師の質を上げるため認定制度
10)
アニメ塾EX
自分たちが持つ教育システム。既にシステム化しているものを中心に教えている。個人での申し込みもあるが、専門学校での採用も4校ほどある(四国、大阪、東京、埼玉)
11)
所見
業界の噂に違わずしっかりと人材育成を行っている様に思えた。採用方法からして非常に練られたもので、既に「アニメ塾EX」として結実している様に業界標準の示唆する教育システムとなっている様に思われた。また、最近「アニメ塾EX」の書籍版『アニメーション・バイブル』(誠文堂)と『アニメスタジオテクニック』を立て続けにスタジオ名で執筆、刊行し意欲的に人材育成手法を追求、かつ普及させようとしている。
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