企業ヒヤリング5〜Vol.3マッドボックス
ヒヤリング三社目は、撮影に対する最新情報を仕入れて置きたいという趣旨でマッドハウスの子会社の撮影会社を取材した次第である。結果的にはアニメ制作における新しい局面を示唆する内容であった。
【企業概要】
1) 企業名:有限会社マッドボックス
2) 所在地:東京都中野区
3) 1972年10月、現業態は2005年より
4) 代表者:奈良井昌幸
5) 資本金:3億5500万円(マッドハウス連結子会社)
6) 設立の経緯:マッドハウスの仕上げ、撮影、CG、編集部が分社化。撮影会社であるが最近は仕上、CG、編集方面へも進出
7) 従業員:46名(内、正社員15名=管理職、チーフクラス人員、人材育成担当など。残りは契約社員と業務委託)
【人材育成】
1)採用:毎年採用している
2)募集方法:教育機関への求人票と専門学校における会社説明会
3)昨年採用実績:撮影6名(新卒2名、中途採用4名)
4)人材の傾向:専門学校出身が多い。日本工学院出身が多いとの事。また、人数が増えているので中途採用組も多い
5)採用試験:最近は技術的なものよりも絵心のある人間を採用する様に心がけており、採用試験では絵を描かせている。絵はうまくなくてもよいが絵を見分ける能力は最低限必要である。絵心がないとただ重ねるだけになってしまう
6)給与:新卒給与は170,000円。社会保険有
7)研修システム:人材によって研修システムを設けている
8)研修内容:チーフ、撮影監督クラスが基礎技術を2ヶ月間教える。人材育成についてはテレコム・アニメーションフィルムが良いと聞いている。
9)キャリアアップ:大体3年で一人前になる。その後はチーフ、撮影監督の道が控えている。評価基準はその都度やってカットなど
10)
教育機関要望:教育機関でデジタル系に対しても絵を描く能力も教えて欲しい。また、仕事に対する情熱のあり方も(どちらかというと学生個人に対する要望)
11)
資格制度:現場人材に対しての資格制度は採用の目安とはならない。教員免許的な資格制度についてはその人のショットを見てみないとわからない。
12)
同業(異業)他社で注目:テレコム・アニメーションフィルム
【所見】
・ アニメの制作行程にありがちな不規則な作業(深夜残業や徹夜など)が余りないとのことであるが、それは社長がIT系の思考に親和性があるからだと思えた。ハドソンのゲーム学校を経てサテライトでデジタル作業を経験したことが基礎にあるのだろうが、制作行程の管理などにもIT系の思考が生かされていることがしっかりした制作工程管理につながっているのでは思った。それは、その後の取材の中で、デジタルを取り入れている会社ほど整然と作業ラインが引かれているということで次第に明らかになって来る。不規則になりがちなアニメの制作行程に工学系、IT系の思考を取り入れる事で改善出来る余地はかなりありそうだ。
・ 同時に、採用試験で絵を描かせてみるといったことでもわかるように、デジタルの技術だけでは済まされない部分があるのは確かなようだ。この辺のことが解明されれば、デジタル行程におけるスキルのひとつの指標基準となり得るであろう
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