企業ヒヤリング9〜Vol.7 東映アニメーション
【選定理由】
日本のアニメスタジオとしては最大手。規模、売上共に日本のトップであり、まずこの会社の話を伺わないとはじまらないと考えたため。 【企業概要】 1) 企業名:東映アニメーション株式会社 2) 所在地:練馬区大泉 3) 設立:1948年1月(日本動画株式会社として設立)/1956年7月 4) 代表者:高橋浩 5) 資本金:28億6千7百万円 6) 設立の経緯: 東映の社長を務めていた大川博が「東洋のディズニー」を目指し国際的ビジネスが可能なアニメの制作を決意、1956年、戦前からの熟練アニメクリエーターが集う日動映画を買収し東映動画を創立した。 7) 企業属性:元請 8) 従業員:327名(単体)/553名(連結) 【人材育成】 1) 採用傾向: ・ 総合職は2年に1度の採用で、現在2011年4月入社の採用選考中。製作現場で働く研修生は毎年採用。 ・ 現場スタッフについては1995年にクリエイター養成機関として「東映アニメーション研究所」をお茶の水に開設し(現在は大泉)育成している。研究生は30名程度。その中から東映アニメーションに入社するのは1名~2名程度。演出、作画が併せて1~2名ほど、美術は大体1人。去年の試験で今年研究所から入ってくるのは1人だけで演出・美術はいない。 ・ 研究所の研究生に関しては、今年4月の入校生については検討した結果、募集をかけないこととした。今の研究生が来年就職する時に仕切り直しとして一回リセットしては、と検討している最中。 2) 募集方法:基本HPと教育機関への求人票である。昨年採用実績:作画系は年2〜3名 3) 人材の傾向: ・ 全体の男女比は 男性234名、女性93名。 ・ 去年の新入社員は女性が多く、割合としては6:4程度。 ・ 最近女性アニメーターが増えた。職種として一番人数の多い演出ではまだ女性は少ないが、ここ数年は助手も含め増える傾向にある。今、結婚して子供がいる女性演出が2名、演出助手3人、演出助手の研修生が5名いる。 4) 採用試験:総合職と研修生で採用プログラムは別。よって試験内容も別。内容も別。研修生採用は研究所の研究生も含め試験を行っている。 5) 初任給: 最初の3年間は基本給19万1000円+交通費で、そこから保険や年金などが差し引かれる。3年経つと基本給による保証部分は縮小し、担当料等の実力に応じた報酬部分が増える 6) 研修ポリシー:(製作現場において) ・ OJTで育成している。 ・ フィリピンの製作スタジオを1986年に設立し、仕上部門からスタート、88年作画部門、90年背景及び撮影部門を稼動させた。97年より作業をデジタル化に転換、それに伴い撮影部門を廃止、現在原画を除く動画、仕上、背景作業のデジタル化は終えている。2006年3Dアニメーション部門がスタート、現在に至る。作画部門では現在、作画監督、原画、動画検査、動画の現地スタッフがいる。 ・ フィリピンスタッフの技能研修については、当初フィリピンからスタッフを日本に招き、研修を受けさせる方法もとったが、主には日本人スタッフをフィリピンに派遣し、現地で指導する方法をとった。90年代半ばにはフィリピンスタジオ内で現地スタッフによる指導が行われるようになり、日本から技術指導の目的でスタッフを派遣することはしていない。 ・ 現在は日本人演出スタッフをフィリピンに派遣、日本国内のスタッフルームとの細かい指示の連絡、打ち合わせ、チェックなどの作業にあたらせている。 ・ 今ではプリキュアの作画監督にまでなるスタッフが出始めている。 ・ 中国にはまだ進出していない。 7) 研修内容:基本OJT。その他、役職に応じた研修を行っている 8) キャリアアップ:研修生については基本給が下がる入社3年後がキャリアアップの試金石となる。動画を飛び越えて原画にさせたケースもある。ただし、仕事内容を見て、プロとして描き続けられるか疑問に思う人に対しては、この道を諦めた方がいい、と勧告する場合がある。 9) 資格制度:総合職においては有効な資格もあるだろうが、研修生については有効とは思えない。 【所見】 創業して今年で54年目を迎えるスタジオであり、完成されたシステムを持っているという印象を受けた。一方で、非常に早い時期(1970年代)からデジタル秘術の研究を行っており、日本で最初にデジタルのシステムを導入しており(1997年)、日本のトップ企業として最先端の技術を開発し敷衍する役割を担っている。
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