企業ヒヤリング14〜Vol.12 ネオメディア プロダクション(イーグルネスト)
【選定理由】
1969年頃に設立された作画スタジオ。著名アニメーター達がここから巣立っており、作画スタジオとしてどのような人材育成を行っているのかその秘密を探ろうと思った。また、「ガチンコ原画塾」を主宰しているのにも興味を引かれた。
【企業概要】
1) 企業名:株式会社ネオメディア プロダクション(イーグルネスト)
2) 所在地:東京都西東京市
3) 設立:1969年頃
4) 代表者:木村圭市郎
5) 資本金:10,000,000円
6) 設立の経緯:
1938年生まれの代表は東映動画出身。『アラビアンナイト シンドバッドの冒険』や『わんぱく王子の大蛇退治』の動画を経て、『少年忍者 風のフジ丸』で原画デビュー。続く『レインボー戦隊 ロビン』で早くもキャラクターデザイン、作画監督を担当。『タイガーマスク』での仕事は、後のアニメーターとアクションアニメに多大な影響を与えているが、1969年頃独立し作画スタジオを開設現在に至る。
7) 企業属性:
・ 原画のみを取り扱う作画スタジオ。原画へのステップアップとして動画部門がない。
・ 「ガチンコ原画塾」は独自のカリキュラムで動画、原画のアニメーターを育てるための塾。週1回 (日曜日)時間帯AM10:00~12:00 PM1:00~3:00
基礎科:期間1年(人物の動き、走り、おじぎ、等の作画)、応用科:6ヶ月(自身でキャラクターを作って自主制作をする。)
塾生の作品を、上映会等で発表する。
月謝は月額1,000円。
8) 従業員: 7名
9) 制作ポリシー:
ピクサーの『カーズ』、車のあの単純なフロントでよくあの様な表情出せると思う。『ニモ』での魚などの表情もすごい。キャラクターが良い。100年経っても追いつけないのでは。
【人材育成】
1)採用傾向:採用は不定期。
2)募集方法:HP
3)昨年採用実績:動画を採用
4)人材の傾向:
・ 最近入って来る人間はTVアニメの影響が大きい。東映入った頃は10人の採用枠に500人位来て関心ある人は多かったが、作品がそれほどなかった。今は物心ついた頃からアニメが氾濫し、それが見て高じて目指してくる人がいるが、見るのが好きな人と、実際描くのが好きな人は本質的には違う。
・ ファンで見ている時には表情やシワのとこまでは考えな。それで何となくあの作品はうまいとか下手だとか言っているが、見るのと描くのとは大違い。実際描いてみると描けない。だから、最近人間が一番大きく違うところはアニメファンの成れの果てみたいなのが多いという事。
5)採用試験:
・ 動画でスタッフ募集するのなら、クリーンナップが綺麗とか単純明快な基準があるかもしれないけれど、クリーンナップがそれ程綺麗でなくても、原画で力を発揮する人間もいる。その辺の選別は本当に難しい。個人差というか、荒っぽい言い方をすれば、鉛筆持てれば上手い下手はともかくとして絵は描ける。
・ ただし、落書きは参考になる。自分がどんな絵を描いているのかを見極めるには。ここは基本無しにいきなり原画。鉛筆持てれば誰でも絵が描けるというのが代表の考え。
6)初任給:出来高制度
7)研修ポリシー:
・ 研修制度は、大手はあるけれど、普通は実際にやりながら覚えていくから、研修制度はない。ウチは原画だけのプロダクションだから。新人で一から第二原画という原画のクリーンナップから始める。慣れたところでテスト的に、少ないカット数で何回も駄目出しして、経験を積んで行くやり方だ。
・ 新人は普通動画スタッフとして取るが、動画で1~2年やって、下手すれば5~6年やっても原画が描けるかようになるかというと描けない。だから、原画を教えるところに行かないと原画は描けない。昔は動画を5~6年やって、先輩がこれで大丈夫だといって原画マンにさせたが、仮に動画を10年やっても原画のトレーニングをやらないと描けない。
・ パースとかは、アニメ学校でも、高校・中学の美術でもやるし、それは当たり前のこと。それをやったから原画が描けるようになるものでもないし。要は動きというか芝居。オーバーアクションというか、動きを強調させて教える、画面が寂しくならないように教える。だから静かな芝居でも、オーバーアクションが出来れば、比較的楽に表現出来る。
・ 本来師匠は楠部さんであるが、大塚さんには結構影響を受けた。要は動きの捉え方、考え方。絵は古いとか今風とかあるが、芝居、動きの基本的なルール・法則は普遍だから、そういった点では大塚さんから影響を受けた。
8)研修内容:直ぐにOJTで原画に取り組む。同部署の先輩が教える。
9)キャリアアップ:
・ 原画からはじまるので動画→原画というアップのシステム自体が存在しない。新人で入ってきたら、まず古い連中のレイアウトとかラフ原画などのクリーンアップをやらせる。クリーンアップやっても動きまですぐ理解出来ないけど、レイアウトをラフ原画からやることで少しずつ経験を積んで覚えて行く。
・ 幾ら動画の中割をやっても、動きは原画マンのもの。それで技術を覚えるのも無理がある。だから白紙の状態で画面のどこでどういう芝居をするかを教えて方がいい。最初は飛んでもないものが上がってくるが積み重ねしか無い。経験しかないし、経験を重ねてだんだん描けるようになる。
10)資格制度:必要ない。
【所見】
非常に好奇心が旺盛で最近の作品などの話も出て来た。3Dアニメなど含めて最近の作品もよく見ており新しい事に対する興味は旺盛で、その柔軟な姿勢は高齢にも関わらず現役でご活躍されている方々に共通した点であった。
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