企業ヒヤリング16〜Vol.14 WHITE FOX
【選定理由】
アンケートに非常に丁寧に答えてくれたので興味を持った。
【企業概要】
1) 企業名:株式会社WHITE FOX
2) 所在地:東京都杉並区井草
3) 設立:2006年
4) 代表者:岩佐岳
5) 資本金:3,000,000円
6) 設立の経緯:
株式会社OLMの制作チーム「OLM TEAM IWASA」のプロデューサーだった岩佐岳が、2006年に独立して設立。
7) 企業属性:制作元請
8) 従業員:制作8名、演出4名、作画20名
9) 従業員の職制:
制作は正社員、演出・作画は完全歩合制。歩合制の提案は作画側から。「業界内で月固定の金額で雇われているアニメーターの仕事に対する姿勢には疑問を感じており、採算の取れない人間がいなくなる事で歩合単価の向上が出来るのではないか」との提案があった。また、制作との信頼を築いていく上でも歩合制にする事がベストとの申し出があった。将来的には地方に活動拠点を移す計画があり、年令の衰えによる収入減少への対応を模索している。
10) 制作ポリシー:
・ 年間1ライン26話しか制作しないと外部に対し公言している。仕事量と規模を今後増やしていくのかと言われると、そのつもりは今のところ考えていない。一つ一つの作品を丁寧に作ることが自分達のやりたい事なので、将来的にコントロールが出来ない規模になることを恐れている。
・ 仕事はTVシリーズにこだわっている。劇場作品もやっていて面白いが、若い人間が多いので、1年1回しか名前がでないのはモチベーションの維持に問題が出る。TVをやりながら劇場をやるということはあるかも知れないが、劇場だけという状況はおそらく無いと思われる。
・ 権利は貰えるモノなら貰いたいが、あまりこだわりは無い。一切権利は要らない代わりに、はじめから制作費を100万でも200万でも上げて欲しいという言い方をメーカー側には毎回おこなっている。作品の内容ごとに最低限の金額を提示し、これ以下の仕事は受けられないと最初に言うことにしている。その代価として、ほぼ全ての話数を社内で制作を行い、スケジュールの遅れにより作監作業を飛ばして納品に間に合わすといったような雑な仕事はしないよう心がけている。
・ シナリオ・絵コンテがスケジュールを守れないのに、原画マンにスケジュールを守れとは言えないので、そこはお互いに頑張ろうという流れになっている。作品によっては監督が仕事を抱え込んだ結果、色が付かないスケジュールになってしまうという話も聞くが、この会社ではそれを一切許していない。上にいる人間は下の人間以上にスケジュールはしっかりとやるよう指導されている。
・ 線撮りの主な原因は作画がスケジュール通りに上がらないところにある。やりきれない仕事量を常に原画マンが抱えおり、それに伴いスケジュールの無いところから手を付ける傾向がある。結果全ての作品のスケジュールが守れなくなる。その点、この会社では線撮りを無くすことで原画等の単価に反映されていくシステムなので、アニメーター達が率先してスケジュールを守ろうとする姿勢でいる。ただし、どう見てもやれないと分かった段階でそれを引き上げて別な人間に巻き直すという事はある。
・ 将来的には田舎の空気がきれいな所に移りたいと考えている。東京スタジオは制作をやっている限り、本読み・音響の作業があるので残すが、社内のアニメーターのほとんどが生活費の安くなる地方に移ることに前向きに検討している。いずれは家を買いたいと思っている人間が多いのも理由のひとつ。
11) 労働環境:
・ アニメーターに関しては完全に歩合制。ただし、会社としての利益が予定より出ている場合は、年2回の報奨金を出している。これは正社員である制作の人間と分け隔てなく利益を分かち合おうという意識から今後も続けていく予定。
・ 会社は制作部を除き、24時間やっている。夜型の人間が多いのが理由だが、徐々にと改善したいと考えている。
・ 管理はさほど厳しくはしていない。ただし、スケジュールを守れない場合は、作業が終わるまでインターネットでのネットサーフィン禁止などの制限を付けることはある。ノルマさえ達成してもらえれば、1日3時間で仕事が終わっても構わない。
・ 制作に関しては、朝当番が10時に来ているが、それ以外の人間も昼までには来るようルール付けしてある。
【人材育成】
1)採用傾向:
・ 専門学校の卒業生が多い。2年間で取った新人動画は6人中5人が専門学校出身。
・ 他社に比べてコミュニケーションをとる場面が多いので、内向的な人は見送るようになっている。
2)募集方法:
新人募集は制作・アニメーターともに年に1回HPに載せる程度。経験者に関しては随時受け付けている。近年は専門学校の就職担当者の要望も有り、募集時期を早めに設定する
3)昨年採用実績:動画3名
4)人材の傾向:
新人は育てているが、他の会社に行くのは止められないと思う。特にアニメーターがやりたいものがあるからこの仕事を選んでいるわけで、それは構わないと考えている。
5)採用試験:
新人に関しては1回デッサン力がわかるモノを送ってもらう。グロッキー帳だとか専門学生であれば描いたレイアウトを送ってもらって、最低限の画力があれば面接に進む。作監が3人いるが最終的には彼らと、代表の4人で面接をして採用を決めている。
6)初任給:
制作は17万からスタート。これでも低い方だとは思うが。社会保険等は全部入っている。アニメーターは歩合+年二回の報奨金
7)研修ポリシー:
・ 研修は動画12ヶ月、原画最大24ヶ月。
・ 新人動画、新人原画に対する「師事制度」を行っている。
・ 動画は12ヶ月はやらせる。本来はもうちょっと動画をやらせるべきだが、現実的にやはり動画だと生活が厳しいという事もあり、動画やっていて楽しいという子も少ないのでやる気のあるうちに原画に上げさせている。ただ動画経験がないと原画も描けないので、1年間は真剣にやりなさいという指導はしている。
・ 新人に対してはミュニケーション能力。常に相手や周りの人間の事を考えて話すように言っている。アニメは集団作業なので一人だけが上手くても、その一人の力では出来上がらない。
8)研修内容:まずは動画の線が描けるようにする事。それさえ出来れば即実戦投入。9)キャリアアップ:特にない。
9)資格制度:
新人に対する資格は不要だと考えているが、フリーのアニメーターに資格(免許)には賛成する。特に難しい試験は不要だが、一般常識や約束事を守らないといった最低限のところを直していかないとアニメーターの地位向上は難しいと考えている。
【所見】
30代中盤の若い代表であったが、非常に落ち着いており、アニメの制作に対してもしっかりとした考えを持っている様に見受けられた。こうした若い世代の経営者がアニメ業界で活躍する事を期待したい。
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