企業ヒヤリング17〜Vol.15 草薙
【選定理由】
デジタル導入で様変わりしつつある美術・背景。その中で、アナログとデジタルをバランス良くつき分けていると会社であると見受けられたのでインタビューを申し込んだ。
【企業概要】
1) 企業名:株式会社草薙
2) 所在地:東京都練馬区栄(江古田)
3) 設立:1990年10月
4) 代表者:中座洋次
5) 資本金:10,000,000円
6) 設立の経緯:エイケンの美術スタッフだった中座洋次が辞職し武者修行をした後、後輩とOVAの背景をやるために1990年に設立。
7) 企業属性:美術制作会社
8) 従業員:37名
【業務概要】
1) 従業員の職制:基本給+出来高
2) 制作ポリシー:
・ デジタル導入は比較的早かったが、大々的に変わったのではなく、手描きはかなり残しつつ、背景はスキャンし、上からPhotoshopで手を加えるといった事を徐々にやりながらデジタル化して行った。だから完全にレイアウトをスキャンして絵の具と紙を使わない様になったのはかなり後です。
・ Photoshopを使いだしたのはずいぶん前で、ゲーム会社さんと付き合うようになり、メールで、PSD画像が送られて来る様になったから。それに備えてMacでPhotoshopはやっていたので、スタートは早かったが、全面的にペーパーレス、になったのはかなり後です。
・ デジタルに対しては会社によっては考え方が違う。ここも手描きで粘った方ではあるが。結局のところデジタルでやるメリットは、一度描いたものがデータとして残すことが出来、他の仕事ではそれに手を加えれば短時間でクオリティアップしたものを画面に出せる事。雲に限らず木もビルも何でも角度も大きさも変えられるから。
・ 効率化を考えるとデジタルは便利だが、問題は使う側の意識で、楽な使い方をすればいくらでも切り張りの絵が出来てしまう。光と影の関係を考えたら本当はこうなんだけれども、素材がこれしか無いからこうしてしまおう、という乱暴な使い方も出来る。
・ 絵画的思考の人などは、山と人物がいたら、極端な話、雲はここからこういう風に流れなければいけない、山の大きさも人物に対してはこうしなければ格好良くならない、という自分の中の絵の規則が出来ている。それが絵描きのセンス、というのがベテラン美術経験者の教え方。顔の角度やアングルが変わったら、それに応じて空や雲も変えなければいけない、というのは絵描きとしては当然の教え方だが、デジタルが進めば進むほど自分が今まで描いた素材を使いたい、という衝動があるから、規則からはみ出ても、「これくらい」、という妥協が生まれる。
・ 人の描いたものが使えるデジタルの長所は先輩や同僚など社内の許せる範囲だったら許される場合もあるが、仮に他所の会社背景を手伝う場合、他所のデータも使えてしまう。それをすると、会社の技術も伸びないし、楽をし過ぎて金を稼げるのは長い目で見ると良くないと思っている。
・ 昔は社内の先輩の技術を盗もうと一枚一枚模写した。また、先輩に怒られながら直されるのが勉強だったが、今はその先輩の絵を自分の画面に持って来られる。デジタルの欠点としては絵的な素養が育ちにくくなる可能性が否めない。
・ そんなケースで新人が短期間に絵を作る時は最低先輩を敬う気持ちを持ち、自分でもそういう絵を描けるようになるという努力をしないと、簡単に使ってはいけないと、新人には厳しく言っている。
・ 目標として劇場クオリティとまでは行かないまでも手抜きのTVシリーズより遥かにクオリティの高い物をTVでも実現出来ると思う。実際そうしてクオリティを上げる方向で頑張っている会社もある。
・ 単にスピードを高めるためだにデジタルを使うのは感心しないが、クオリティを上げる、短期間で新人を育てるという点においては賛成。当然社内でもデジタルは進めており、同時に簡単に人のものを使うなとか、他所の会社のものを使うなという常識は教えてはいる。
・ 今後3DCGが背景業界に入ってくると予測している。というか主流になって来るのではと。ウチも学園モノなどで、簡単に言うとテクスチャを張った教室を3Dで作っておいて(3DCGの画面だとアニメのセルを乗せると浮くので、手は加えるが)、窓と床と側面のテクスチャを張った素材があれば、それにPhotoshopで手を加えればTVのシリーズの背景としては十分なものが出来る。そういう時代になっていく可能性があるが、そうなるとそもそも元の絵を誰が描いたのかという問題はある。
・ デジタルや3Dに対するそれほど確たる将来ビジョンを持っている訳ではないが、環境は備えつつはある。2Dからデジタルに移る時もそうであったが、徐々に回りの時代に合わせてやっていくという事くらいしか今は考えていない。1手2手先は読んだ方が良いと思うが、あまり先の手を打ちすぎると社内に無理が来て、ギクシャクして精神的に疲れる気はする。
・ 現状13本1クールのTVシリーズが最近多いが、オンエアーは3ヶ月で制作に6ヶ月。やり始めたらすぐ終りみたいな所もあり、その上、「えっ、そんなのやってたんだ」、という記憶に残らないパターンが多い。せめて26本は作って欲しいが、スポンサーサイドの問題もあり、13本で人気が出たら折を見て続編と言うパターンが多くなっている。作る方からすると手間がかかってる割に実入りが少ないなと感じてしまう。
・ ゲームの背景もやっているが、そのたきっかけは、代表が好きだったから。グラフィックの能力が高くなり、これならやれると思い、ゲーム関係に営業を行った。
・ 子供の時からゲームが好きで、仕事としてはTVとOVAの仕事がメインだったが、スーパーファミコン(以下SFC)からサターンにゲームハードが移ってどんどん画像が上がり、ゲーム関係の仕事で多少売り込めないかと思った。営業を個人的に結構やり、少しずつでも仕事は来るようになったがアニメと比べると仕事は多くなかった。
・ 一番の大きなきっかけとなったのはスクエアエニックスさんがプレイステーション(以下PS)に移り、ファイナルファンタジー7(以下FF7)の開発を始めた時にファミ通に「CGデザイナー募集」というのが大々的に出ていたのでアニメで使っていたデザインを送ったところ、すぐ来てくれと連絡があってFF7の仕事をやるようになった。3Dのデザイン画だが、アニメでいう美術設定の仕事を良心的にやった。
・ SFCだとドット絵でパースがリアルに出来なかったが、PSでハードの能力が上がり、ウチのアニメ美術設定が重宝され、スクエアエニックスさんと付き合う様になりかなり幅が広がった。
・ 一時スクエアエニックスさんが大きくなった後、紆余曲折あって、ゲーム関係スタッフがバラバラになってもウチの名前を覚えてくれていて、他所の会社からでも仕事が来るようになった。
・ 仕事量としてはゲームが3割程度。アニメが少ないとゲームが5割になったりする事も過去にあった。ゲーム会社から直で来る仕事はアニメよりも全然高い。ただアニメ会社が間に入って、OPなどのアニメを作る感覚でやると安くなる。ゲーム会社の直で来る場合はアニメよりは率は良い。
・ せっかく力を入れて制作した背景画を何とか発表したいと思い実験的に出版したところ、思いのほか売れた。以降定期的に画集を出している。
・ 最初のきっかけは、せっかく時間をかけて描いた背景を誰も見たことがない、とうのは勿体無いという想いがあって、今に至っている。
・ 「ぼくらのかぞく」の背景を一生懸命描いたがゲーム自体が全然売れなくて。これだけいっぱい描いたのにゲームが売れないから見られない。だったらこれを画集にして出したい、と色んな出版社に持っていったが門前払い。自費出版も考えたが費用が思ってた以上に高いので考えていたら、写真集を出している京都の出版社が1社だけ興味を持ってくれて、とりあえず「ぼくらのかぞく」は知名度が無いから、「ぼくらのかぞく」の前にやった「ぼくのなつやすみ」を最初に出版した。その後、草薙画集を買取分を多めにして出版した。すると結構売れたので、次からは出版社持ちで企画は好きに出して良いということになった。
・ 画集出す時にゲームの版元を説得するのが大変だった。ゲーム会社は権利関係にはシビアーな会社もある。
3) 労働環境:
・ 10時~20時が基本。ただ近ごろはフレックスになって来ているが、平均してみると能率が落ちるので望んでいない。
・ 現在37人働いている。去年、一昨年は仕事が増えたため増員したが、不景気になってしまい、全員抱えていられるかは不安な要素である。
・ 男性の方が多い。女性は全体の2/5であるが、新人は女性のほうが多く中途採用者だと男性の方が多い。
【人材育成】
1) 採用傾向:地方の専門学校からが多い。わざわざ地方から来るので気合を入れて選考している。傾向としてはアニメよりもむしろゲーム系の専門学校からの応募が多い。
2) 募集方法:HP
3) 昨年採用実績:背景・3DCG経験4名
4) 初任給:
新入社員の給料は基本給15万。試用期間3ヶ月となっているが1ヶ月位で結論は出す。実際最初の1ヶ月で15万稼げないが、早い人間ならば3~4ヶ月で20万円になる。Photoshopのスキルは必須で、絵は上手いけれど使えないとなると時間はかかってしまう。ということもあり今はゲーム関係の専門学校から採用しているが、ほとんどPhotoshopを使えるので手描きを教えていた時代よりは育成速度早くなった。
5) 研修ポリシー:研修期間は一か月。
6) 研修内容:新人教育に関しては、草薙独自のマニュアルに沿って教えている。
7) 資格制度:アニメーターなどの資格制度は指導者やテキストによる。教員免許的なものに対しては否定的。
【所見】
色々な話を聞かせて頂いた。思った通り、手描きの感覚を大切にしつつデジタルも取り入れていた。ゲームや画集の話も聞けて参考になった。
映画専門大学院大学
増田弘道様
はじめまして法政大学文化振興団体 立川計画比留間ひかりと申します。
突然のご連絡失礼いたします。また夜分に申し訳ございません。
ただいま私たち法政大学文化振興団体立川計画では、若手アーティストの手で東京都立川市を盛り上げようと
音楽×映像×パブリックアートイベント「FARET TUBE2010(ファーレチューブ2010)」
を立ち上げています。
FARET TUBE 2010 http://farettube.web.fc2.com/
主催:法政大学文化振興団体 立川計画
共催:ファーレ倶楽部
後援:立川市 法政大学 キャリアデザイン学会 立川商工会議所 立川観光協会 社団法人立川青年会議所(申請中)
協力:エリアネットワーク株式会社 株式会社GOODDAY シネマシティ株式会社 TTM株式会社
内容→コンペを勝ち抜いたミュージシャンと、学生映像クリエイターが手を組み、
立川市パブリックアートエリア「ファーレ立川」をモチーフにミュージックビデオを制作。 11月、
立川市総席数1245席を誇る映画館『CINEMA・TWO』、 JR立川駅前シティビジョン、法政大学にて上映。
DVD化。
イベント告知活動、MVの制作・映画館や駅前ビジョンでの上映、 アーティスト同士の交流などを通し、
アーティストの皆様の今後のご活躍のお手伝いをさせていただけたらできたらと思っております。
【ただいま、MVの制作してくださる学生映像クリエイターの方を映像のジャンル問わず、大募集しております。
ぜひ、貴校の皆様にもご参加をお願いいたしたく、まことに唐突ながらご連絡させていただきました。
本企画にご参加いただけそうな、学生様をご紹介してくださいましたら幸いです。
どうかお力を貸してくださいませ。】
人気投票により集まったアーティストの方とともに約2ヶ月の制作期間で、
「ファーレ立川」を何かしらのモチーフに使用したMVを作成していただきたいと考えております。
映画館や、巨大ビジョンで作品の放映、また若手ミュージシャンとのコラボレーションなどを通して、
今後のアーティスト活動につなげていただければ、と思っております。
以下が企画のおおまかな流れとなります。
step1 webでオリジナル楽曲を応募!→You Tubeで公開
step2 一般ユーザーがお気に入りミュージシャンへの人気投票、
上位20組のミュージシャンがミュージックビデオ制作権獲得!
step3 11月、立川市 CINEMA・TWOで一般上映
現在、ミュージシャンへの人気投票中です。 70組のアーティストがMV制作権をかけた投票を行っております。
こちら⇒http://farettube.web.fc2.com/
また本企画は各種、メディアにも取り上げていただいております。 よろしければ記事をご覧ください。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/404689/(6月17日付産經新聞東京版)
【映像制作について】
作品規定:ミュージシャンの希望を聞きながら制作する。
ファーレ立川の作品をなんらかの手法で取り入れる。
制作期間:8月16日~10月23日 (10月24日提出)
報酬:基本的に無償(機材・スタジオ等は法政大学にもあり)
お問い合わせ・ご質問は
[email protected] までご連絡お願いいたします。
お忙しいところ、申し訳ございません。何卒よろしくお願い申し上げます。
比留間ひかり
法政大学文化振興団体 立川計画(キャリアデザイン学部所属)
WEBサイト:http://farettube.web.fc2.com/
mail: [email protected]
投稿情報: 法政大学文化振興団体 立川計画比留間ひかり | 2010/08/08 02:14