『「踊る大捜査線」は日本映画の何を変えたのか』
日本映画専門チャンネル編/10年9月/幻冬舎新書/各800円(税別)
日本の実写興行収入記録を持つ『踊る大捜査線』についてキネマ旬報の掛尾さん、映画評論家の佐藤忠男氏、精神科医の名越康文氏、脚本家の荒井晴彦氏などが言及した分析書である。褒めるだけではなくかなり辛口の論評もあるので面白い。意外な拾いもの(失礼!)
では日本の映画興行収入記録を持つ千と千尋、あるいはジブリは日本の映画の何を変えたのであろうか?思うにその表現は多くの影響を与えたのは事実であるが、ビジネス的には日本映画(劇場アニメ)を何も変えてないのではないか。つまり影響を与えなかったのではないか。
何故ならジブリのビジネスモデルを持つ企業はジブリしかないからだ。フォローワーが出て来なかった。誰も真似しなかった。
『アニメは越境する』
津堅伸之他共著/10年7月/岩波書店/各2,800円(税別)
岩波の「日本映画は生きている」シリーズ全8巻の中の一冊である。編集委員は黒沢清、四方田犬彦、吉見俊成、李鳳宇。著者は津堅信之さん他9名。ほとんど大学の先生が書いている。
そのせいかどうも観念的である。指摘が当たっているかどうか私の頭脳では理解出来ないが、アニメを語るというよりは自分の知識や見識を見せつけたい、あるいは自慢したいというように見えて仕方がない。読んでもちっともわからないし、得られるものが何もない。
こういった方々は、たまたま今アニメが旬なので取り上げてくれているのであろう。そういう意味では慶賀すべき事であるが、紙の無駄という気もする。津堅さん、イアン・コンドリー氏、神山健治氏以外はほとんどそうである。巻末の佐藤大、上橋菜穂子両氏のエッセイも余りに短く客寄せというのが見え見え。余りに頭でっかちである。
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