第四章&五章「激動の10年 テレビアニメ篇 劇場アニメ篇」13
ジブリの位置付け3
時代とテーマ
ジブリマジックが解けかかっているとすれば、その原因はどこにあるのか?それを考えると「時代とテーマ」にたどり着くのではないかと思う。具体的には時代精神との遭遇である。
かつて、『もののけ姫』の公開時、ジブリは作品の時代的意義をとことん追求した。それが、「生きる」という言葉に集約されていたのであるが、とにかく時代性を追い求めることにかけては真摯であり執拗にであった。
おそらく、それが功を奏し、邦画興行収入ナンバーワンという快挙を成し遂げたのであろう(個人的には、戦後日本人なら誰しもが持つアニミズム的で自然な宗教観までも呪縛していた禁忌が、50年を経過しようやく溶けたのと、もののけの世界観がシンクロしたためだと思うのだが)。
千と千尋も、時代意義の追求はあった。もののけに引き続き、神道的なアニミズムの追求である。しかし、ハウルはどうか。果たして、時代精神に遭遇するテーマを持ち得ていたのか?
以降、個人的に見る限り、時代性の追求の手が緩んだように見える。少しずつではあるが、ジワジワとそれは広がり、見る方の緊張も緩和されてきた。それが作品にとって良いことなのか悪いことなのかは分からないが、ジブリ作品に時代を感じさせるテンションが少なくなっていると感じるのは私だけだろうか。
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