『マンガの方法論1おれ流』
(柳沢きみお/朝日新聞出版1,890円/2010年12月)
本当のプロフェッショナル
久しぶりであるが読みためたアニメ・マンガ関連(以外のものの結構あるが)の書籍を紹介して行きたいと思う。
落合元監督ではないが、「おれ流」と銘打つだけあって両者には本質的に非常に相通じるものがあるのではないかと感じた。つまり、二人とも本当の意味でのプロフェッショナルだということである。
柳沢きみおを意識しはじめたのは、多分「女だらけ」や「月とすっぽん」あたりからではないかと思う。それから「すくらんぶるエッグ」、そして「翔んだカップル」である。ただし、「翔んだカップル」についてはキティフイルムで映画化したので自分で買って読んでなかったかも知れない。
話が逸れるが、この映画を制作するにあたり、スカウトされたのがかの石原真理子である。後にマネージャーとなる女性が、確か自由が丘でスカウトしたはずだ。その頃はまだ、「尾見君が好きなの」と泣く聖心に通う可愛い女子高生であった。
その後、真理子じゃなかった柳沢きみおは青年誌に舞台を移し、「妻をめとらば」「DINO」「大市民」などのヒットを飛ばすが、その頃までは結構読んでいたものの、その後マンガ(雑誌)を読まなくなったため、次第に疎遠となるが、時々目を通す作品は相変わらず面白かった。
本著は、そんな著者の履歴を作品中心に語り降ろしたものである。そして、デビュー以来40年にわたり現役として活動して事実に対する淡々とした語り口が落合博満に通ずるものがあると感じた。
落合がしばしば野球選手は「自営業」であると語るが、マンガ家もまったくその通りで、深職業の本質を深く洞察しながら、プロとしての自覚を強く持ち、自分なりの強固なドクトリンを持つという点において二人は非常に似ている。そうでなければ1,000人の中の3人には残れないであろう(文中に年間1,000人のマンガ家がデビューし、10年後に残っているのは3名とある。プロデビューする数は少ないが、競技人口から考えると野球も同じようなものではないか)。
おそらく柳沢きみおについては好き嫌いはあるだろうが(特に画について)、ビジネス本としても十分に耐えうるので読んでみてはどうか(落合本『采配』も面白いです)。
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