『アメリカ映画製作者論』(森岩雄/垂水書房/1965年)
優れたプロデューサー論
あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
森岩雄の本を読んで抜きんでていると思うのは豊富な洋行体験である。同時代の人が海外、特に西欧を訪れるのが希な時代に何度もアメリカやヨーロッパに出向いている。
今のように交通機関が便利でない反面、滞在期間も長いせいか、ビックリするような人々と会って人脈を築いている。この様な出会いが本書に結実しているのであろうが、おそらく本邦初の本格的な製作者論である。
ディレクターシステムのケースが主流の日本の映像づくりにおいて、東宝がプロデューサーシステムであったのは森岩雄がいたからであろう。もちろん、黒澤明をはじめとする実力監督が多く在籍していが、プロデューサーも森岩雄を筆頭に藤本真澄、田中友幸などの存在があった。プロデューサーを志す、あるいは映画史を専攻する人間にとっては必読の書であろう(この本は安いので買えるはず)。
ただし、本書はニケルオデオンからはじまるハリウッドの映画史に続き、製作者の紹介という構成になっているが、そこで紹介されているのはグリフィス、デミル、メーヤー、チャップリンである。この中で、いわゆる純粋な製作者(プロデューサー)はメーヤーだけで、他は監督として著名な人物であるが、実際には自己演出作品のほとんどにおいてプロデューサーを兼務している。その意味で、いずれも経営的センスを持った監督であり、演出的才能のある製作者であったのだ。
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