『中国・電脳大国の嘘 「ネット世論」に騙されてはいけない』
(安田峰歳/文藝春秋1,680円/2011年12月)
アニメで中国は変わるのか?
日本アニメの流行をきっかけに中国人に日本との新次元の交流意識が芽生えるのではないかと思っている日本人は結構いるのではないか。実は遠藤誉さんの著書を読んで以来、日本のアニメ、ゲーム、マンガを当たり前とする80后、90后中国世論を変えるきっかけになるのではないかという意識を持った。
ところが、安田氏によると中国でアニメファンが例え数百万人いても、人口比でいえばゼロコンマ数パーセントにしか過ぎず、日本人が勝手に思い込んでいるような影響は一般的にはほとんどないとのこと。これは確かに事実であろう。数字だけ見るとほとんど影響を及ぼす可能性はない。
ところが、日本でもオタクと言われている層は実は数十万人しかいないと思われる。アニメ業界で昔から言われているのは「オタク20万人説」。アニメが好きでパッケージまで付き合ってくれる人々である。人口比でいえば中国とさほど変わらないが、彼らの影響力はかなり強いものがある。
おそらくは国家の体制の違いがオタク(国民性)のあり方、発言力を異なったものにしているのであって、それは人口比何パーセントといった数字の問題ではないような気がする。
かつて、日本で明治維新が起こったときの中心人物はわずか3,000名ほどであったという。命を投げ出してもいい思った人間が3,000人いれば世の中は変わるのである。その証拠に命知らずの?日本のオタクは日本のポップカルチャーを変えたのである(支えたと言った方がいいかな)。
要は、数百万人いる中国オタク層が真剣に文化の解放を目指せば中国も変わるということであるが、まあそんなことを思う中国人がいればの話であるが。なお、本著の少し前に出た前著『独裁者の教養』も面白いのでお勧めする。
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