『とてつもない日本』
(07年/麻生太郎/新潮選書/680円+税)
一部では既に有名だが麻生太郎は筋金入りのマンガ好きである。愛読書は『ゴルゴ13』だそうだが、おそらく相当昔から読んでいるのは間違いないであろう。その麻生太郎に私はあることがきっかけで急に興味を持つようになった。それは彼が手塚治虫を国民栄誉賞に推薦したと知ったからである。
1989年手塚治虫が亡くなった時、麻生太郎は国民栄誉賞を受賞するように後藤田官房長官や中曽根首相に進言したそうである。その理由は日本がロボット大国になったのは鉄腕アトムが大変な貢献をしているというものであったが、残念ながらマンガ家に送った前例がないということで見送られてしまった。
アトムが日本のロボットづくりに大いに役立ったのは本当の話である。決して科学が発達していたとはいえなかった日本に1970年代から突如としてロボット産業が生まれたのはマンガやアニメのアトムを見て自分もロボットをつくってみたいという人間が大勢誕生したからなのである。実際、現在一線で活躍しているロボットの技術者や研究家はほとんどアトムや鉄人28号、若い世代ならガンダムを夢中で見た人々である。鉄人28号はアトムの人気を受けてつくられたものであるし、ガンダムは虫プロから独立した人間がつくったことを考えると、やはり日本のロボットの原点にはアトムがいるのである。
マンガの神様といわれる手塚治虫であるが、もちろん日本初のテレビアニメで一大アニメブームをつくったアニメの神様でもあるし、そこから日本のロボット産業が世界一になるきっかけをつくったロボットの神様でもあるのだ。さらに、その産業用ロボットが自由主義圏の工業生産性を高めたことで社会主義国との決定的経済格差を生み出しベルリンの壁を崩壊させた。その意味で手塚治虫は平和の神様でもあるのだ。このへんの事情については是非本にまとめてみたいと思っている。
安部首相より年齢は随分上の麻生太郎であるがその感覚は非常に若い。時期尚早ではあるが、知的立国を目指す国ならば総理大臣としては魅力的な人材ではないかと思う。
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