電波利用料放送局負担分値上げ、放送局の負担率是正
7月27日の日経朝刊一面に、総務省が電波利用料のうち放送局負担分を2008年から段階的に上げる電波法改正案を来年の通常国会に提出する方針との記事があった。07年度の電波利用料の歳入見込みは650億円であり、その8割以上は携帯会社の負担で、NHKや民放放送の負担割合は1割にも満たないという。
このような電波利用料の実体を知ったのは池田信夫氏が著した『電波利権』(06年/新潮選書)によってであった。それによると、放送の電波利用率8%に対する支払率は1%以下(2003年実績)、携帯電話の電波利用率は11%であるのに対して実に93%以上の電波利用料を負担しているということである(もちろん、それは携帯電話ユーザーが払っている)。しかも、その大部分は地上デジタル放送のために必要な中継局の変換工事につかわれており、本来テレビ局の私有財産である施設に対する公費支出には批判があるという。
それにしても、放送業界が「原資」に当たる電波の支払いが65億円以下いうのは驚きである。戦後民放ラジオ局が開局するに当たり資本を集めた際に、多くの企業から「君のところは空気を売るのか!」(大山勝美『私説放送史』講談社)と門前払いを喰らったとあるが、これではまさに空気を売っているようなものである。
アメリカでは1994年に携帯電話の電波利用に対するオークションを行い劇的な成功を収めた。逆に、ヨーロッパで行われたオークションでは免許料が高騰し携帯電話業者は巨額の負債を抱えて経営危機に陥った。一方日本はどうかというと、まだ郵政省による命令と統制が強く、既得権重視のためなかなか改革が進まないと池田氏は述べている。阿部政権になりNHK受信契約料値下げ勧告や今回の電波利用料負担率見直しなど、具体的な制度改革がはじまっているように見えるが果たしてどうなのであろうか。
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