ドリームワークス、パラマウントから離脱か
『シュレック3』を公開中のドリームワークスがパラマウントから離脱(昨年パラマウントが16億ドル=1900億で円買収)という記事が7月25日の各新聞で報道された。原因はパラマウントの親会社バイアコムのサムナー・レッドストーン会長らによる現場干渉に不信感を強めているということであるが、ドリームワークスといえば映画監督のスピルバーグをはじめ、ディズニーでアニメを大復活させたジェフリー・カッツェンバーグ、1970年代にジャクソン・ブラウン、イーグルス、リンダ・ロンシュタットなどを輩出、ウェスト・コーストサウンドの総本山であったアサイラム・レコードの創立者デビッド・ゲフィンの3人で1994年に設立された文字通りのドリームカンパニーである(ドリームワークスSKGが正式名でSKGは3人の頭文字)。アメリカン・ドリームを体現したようなこの3人がつくった会社にたちまち世界中から資本が殺到し(サムソンも出資した)、改めてその期待の大きさ驚いた記憶がある。
ドリームワークスといえば『宇宙戦争』などスピルバーグ作品が有名だが、もうひとつの目玉がアニメである。『シュレック』や『マダガスカル』といった3Dアニメ作品を次々とヒットさせ、ハリウッドにおいてディズニーに並ぶアニメ雄となっている。特に『シュレック』シリーズの人気は凄まじく、『シュレック2』はタイタニック、スター・ウォーズに続き北米歴代3位という興行記録を持っている。
このアニメ部門を取り仕切っているのがディズニーの社長候補であったカッツエンバーグである。パラマウント時代から猛烈なビジネス振りで知られる人間であるが、ディズニー時代、中興の祖であったCEOのマイケル・アイズナーと二人三脚で再建を果たした社長のフランク・ウェルズが飛行機事故で亡くなると、自分を社長にするようアイズナーに迫ったが断られドリームワークスを設立した。このへんの事情は『ディズニー・ドリームの発想〈上〉〈下〉』(マイケル・アイズナー/徳間書店)に詳しい。
3Dアニメに活路を見いだしたドリームワークス
カッツエンバーグはドリームワークスで早速アニメをつくりはじめる。しかし、既にその時2Dアニメの市場は後退していた。特に二〇〇三年に北米で公開された大作『シンドバット7つの海の冒険』は興行成績を見てもわかる通り、「歴史的な失敗作」となった。そのため、ドリームワークスはアカデミー賞のアニメーション部門にこの自社作品を出すのを見送り、全米での配給を手がけただけの今敏監督の『東京ゴッドファザーズ』を推挙したほどであった。
〈ドリームワークス2Dアニメ北米興行収入〉
1998年『プリンスオブエジプト』 50,863,742ドル
2000年『エルドラド 黄金の都』 50,863,742ドル
2002年『スピリット』73,280,117ドル
2003年『シンドバッド7つの海の冒険』26,483,452ドル
(「BOX OFFICE MOJO」「Animated Movie」より)
2D劇場アニメの衰退現象はディズニーも同じで2004年には遂に2Dアニメのスタジオを閉鎖してしまった。そして、その替わりに登場したのが3Dアニメで、ピクサーの『トイストーリー』が登場して以来、長らくディズニー/ピクサーとドリームワークスで市場を二分してきた。しかし、両者の成功を横目で見ていたメジャー映画各社が一斉に3Dアニメ市場に参入、そのため2006年は空前のラッシュとなった。当然数字は割れたが、今のところドリームワークスは勝ち組として残っている。
実はドリームワークスでは2004年にアニメ部門を分社化し、ドリームワークス・アニメーションSKGとしてニューヨーク証券市場に上場している。そういう意味でアニメは今回のパラマウントとの問題の範囲外ともいえるが、本体にはスピルバーグがプロデュースした『トランスフォーマー』といった日本のコンテンツをテーマとした話題作もあり今後の動向に注目したい。
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