英国で進む放送と通信の融合
英国の国営放送であるBBCは7月27日から「iプレーヤー」というBBによるオン・デマンド放送を開始した。これは放送後1週間までの番組をウェブサイトからパソコンに取り込み1ヶ月保存出来るというもので、見たあとは自動的に消去される。ケーブルテレビ経由や携帯への展開も検討中であるとのことだ。BBCは既に「ニュース24」という報道専門チャンネルをネット経由で生放送しており、YouTubeに対する番組提供を含め放送と通信の融合に非常に積極的である。また通信事業サイドも音楽や映像など様々なサービスを展開しておりメディア全体で放送と通信の融合を推進している。
翻って日本はどうかというと英国に見られるようなダイナミックな展開が見られない。これは明らかにキープレーヤーである放送業界が消極的なためであろう。その原因は二つあると考えられる。
ひとつは、放送以外のメディアにおける収益モデルが確立されていないからであろう。高収益の地上波広告収益モデルに匹敵するビジネスモデルを構築することは難しい。従って、それ以外のメディアにおけるビジネスはコストセンターとなる可能性が高くリスクが大きい。
二つ目はよく言われることであるが著作権の問題である。具体的には音楽著作権と俳優の著作隣接権である。実はこの二つに関して放送業界は著作権的に非常な恩恵を被っていた。どんな音源(CD)でも自由につかえ、俳優に関しても番組出演に応じればその後何遍でも放送できるという特権である。事前の承諾なしに行使できるこの権利は放送局にとって非常の大きなアドバンテージとなっている。
ただし、これはあくまで「放送」だけで、その番組をDVDにしたり、BBで放映したりしようとすると音楽著作権者や俳優に再許諾を得なければならない。そういった労を取ってもDVDで出したり、BBで放映する(市場)価値があるものならいいが、それに見合う作品は多くない。事前に許諾を得ればいい話なのだが放送局は今さらそれが面倒なのであろう(なお、映画の場合は出演に応じればその後全てのメディアをクリアーできる)。
アニメが必ずDVDになりBBや携帯でも見られるのは、最初から音楽(オリジナルがほとんど)や声優の著作権を製作会社(製作委員会)クリヤーしているからでる。アニメ業界では当たり前のことである。
日本における放送と通信の融合はおそらく著作権の改正頼みになるのではないか。しかし、『アニメビジネスがわかる』でも述べているように、本来プロデューサー(製作者)が事前に一括した権利処理を行うのが本道と思われるのだが。
ネットとアニメをつなぐ新しいビジネスを考えています。参考になる資料などがとても少なく困っていたのですが、「アニメビジネスがわかる」は大変参考になりました。
投稿情報: okamoto | 2007/08/01 01:13