アメリカは映画、日本はアニメが強いウィンドウを持っている
アニメ業界に身を置くようになってわかったのは、やはりアニメビジネスは日本の映像ビジネスの中で一番進化しているということであった。これはマッドハウスで働く前から感じていたことであるが、実際身を置いてみてその思いを強くした。
なぜ進化しているかといえば、アニメビジネスが一番広いウィンドウを持っており、かつそれぞれにおけるノウハウが開発されているということであった。ここでいうウィンドウというのは、一言で言えばコンテンツPRやセールスのためのメディアということであるが、わかりやすくするために現在このウィンドウを一番多く持ち、かつ整然としているハリウッド映画を見てみよう。
【ハリウッド映画に見るウィンドウ】
WINDOW1映画興行→0ヶ月
WINDOW2機内上映→1ヶ月後
WINDOW3レンタル・セルDVD発売→3〜6ヶ月後
WINDOW4ペイ・パー・ビューTV→7ヶ月後
WINDOW5ペイTV局→1年後
WINDOW6ネットワークTV局→2年後
WINDOW7ケーブルTV局→ネットワークの1年後
WINDOW8地方TV局→ケーブルTV放映のあと
WINDOW9インターネットによるオン・デマンド配信→随時
(『ビッグ・ピクチャー』エドワード・J・エプスタイン著/塩谷紘訳/早川書房)
以上であるが、最近ではインターネット・メディアのオン・デマンド配信が注目されるようになり、全体的なウィンドウの見直しを計る機運が出ている。マイケル・アイズナーからバトンを受けたウォルト・ディズニーのCEOであるボブ・アイガー氏が日本経済新聞のインタビューに対し、ネット時代においては「国別に映画の封切りやDVDの販売時期を設定する従来手法が通じなくなる」と述べており、ウィンドウ政策に大きな変化が訪れることを示唆している。
一方日本ではどうだろうか。日本で一番多いウィンドウを持つ映像コンテンツはハリウッド同様映画ということになるが、ビジネス性(収益性)ということでいえば同じ映画でも実写よりアニメに軍配が上がる。これはテレビ番組におけるビジネス性を考えるとわかりやすい。実写番組の場合、放映のあとのウィンドウは再放映とパッケージ(DVD)程度であるが、アニメの場合、ほとんどのコンテンツがパッケージ、再放映、配信、海外販売というウィンドウがスケジュール化されている。またコンテンツの寿命においてもアニメの方が実写作品より長命のものが多い。そういった日本の実写コンテンツから比べるとアニメは実に優れたビジネス性を持つコンテンツなのである。
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