ことのはじめは西暦2000年
今をさかのぼること7年前の2000年、縁あってマッドハウスで働くようになった時、アニメ・ビジネスからしばらく遠ざかっていたこともあり、まず自分が身を置く業界の勉強しなければと思った。いったい、どれくらいのレベルの産業なのか、毎年どれほど生産されて、どれだけの売上を上げているのか。
しかし、現在でもそうであるがアニメ・ビジネスの実体について書かれた資料はほとんどなく、参考になるのはわずかに日系BP社の中村均氏(その後『日経キャラクターズ!』創刊編集長となる)が中心となって執筆された『アニメ・ビジネスが変わる』(1999年)、『進化するアニメ・ビジネス』か、電通総研が毎年出している『情報メディア白書』程度しかなかった。
また、自分が働くことになったマッドハウスの作品についても知識として覚えておきたいと思ったのだが、マッドにはビデオやDVDのサンプルがあるだけで全くデータ化されていなかったのである。まあ、これはマッドに限ったことではないだろうが、東映アニメーションやトムス、日アメ、サンライズのように自社で権利を保有しているため、作品セールスのためにデータが欠かせないような「製作会社」でない限り、データづくりはコストセンターになるだけである、ひたすらつくり続けてきた日本の制作会社が自社の作品データまとめる余裕があるはずもなかった。
また、作品のデータ化は権利の所在を調べる上でもどうしても必要と思われたので、会社にあるビデオなども参考にしつつ、当時角川書店から出ていたビデオ・DVDカタログを買い求め作品をデータ化してみたのである。もちろん、創立者の丸山さん(*注)の頭の中にはあったのだろうが、全ての作品全ての工程に目配せをしている状況で、とてもそんなことに時間を割いて欲しいとは言えなかった。
この作業は制作年、タイトル、スタッフクレジット、放映・上映・発売データなど結構時間がかかったが、おかげでマッドがつくりつづけて来た作品の概要をつかむことが出来た。そして、このデータが違った効用を生むことになるのである。
(*注):丸山さん/丸山正雄、1941年宮城県生まれ。法政大学卒業後虫プロ入社。1972年マッドハウスの設立に傘下、その後長く代表を務める。代表作は数知れない日本を代表するアニメ・プロデューサーである。
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