津堅信之『日本初のアニメーション作家 北山清太郎』
(07年/臨川書店/2,400円税別)
私は東京国際アニメフェアでアニメ産業に多大なる貢献があった方々を選考する功労賞の委員を仰せつかっているが、そろそろ日本にもアニメの正史が生まれていい時期であると思いがあってこの賞を推進したという経緯がある。
著者の津堅氏はアニメーション史を体系的に取り組んでいるおそらく日本で唯一の研究家であり、本書はアニメ正史の幕開けとなる歴史的な意味を持つ。
「シンクロニシティ」という言葉に代表されるように、同時期に同じことを考えている人間は必ずいるようで、日本におけるアニメーションも奇しくも1917年に三人の作家によってスタートしたのである。幸内純一(こうない・じゅんいち)、下川凹点(しもかわ・おうてん)、そして本書の北山清太郎である。
著者が同時期にスタートした三人の中で北山を「国産第一号の作品の作者ではなかったようだが」「日本初のアニメーション作家」としているのは、「作品の制作本数の多さ、内容の多様性、そして日本初と考えられるアニメーション専門スタジオの創立など、活動の充実度は他の二人を圧倒している」からであると述べている。画家として岸田劉生、木村荘八などと交流がありながら、複数の美術雑誌も発行していたというから本来事業意欲は旺盛であり、アニメをビジネスとして捉えた「製作者」のさきがけであったのではないだろうか。
今回津堅氏の書籍を出版した臨川(りんせん)書店は東西の学術書を中心とした京都の出版社であるが今年に入ってマンガやアニメ出版に関する意欲的な動きが見られる。未読のものばかりだが目を通してみたいものばかりである。特に不朽の名著『日本アニメーション映画史』を著した渡辺泰氏による、アニメーションの父『政岡憲二』は本書同様必読であろう。
〈臨川書店マンガ、アニメ関連書籍〉
『年表日本漫画史』清水勲
『視覚とマンガ表現—科学とマンガのナベ《鍋?》ゲーション』牧野 圭一/上島豊
『メディアのなかのマンガ—新聞一コママンガの世界』茨木正治
『差別と向き合うマンガたち』吉村和真
『政岡憲二』渡辺泰
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