右肩上がりのアニメビジネス4〜テレビアニメの時代
最強のマンガ家が自ら最強の原作をアニメ化したその結果は大ヒットであった。技術的に見ると「動く紙芝居」であったにもかかわらず子どもたちの反応は熱狂的であった。
私はアトムのマンガが掲載されていた『少年』を購読していたこともありテレビではじまった時最初から見ていた記憶がある。内容もさることながら忘れられないのがマーブル・チョコレートである。おまけについていたアトム・シール目当てで食べていたが、アトムは商品化によって収益を上げるビジネスモデルの最初の成功例となった。クオリティや製作費の面で悪い先例となったという点もあるがトータルで見ると日本のアニメ産業が発展するきっかけになったのは間違いない。
面白いのは「動く紙芝居」と言われ日本のアニメ弱点だと思われていた部分が最近評価されるようになったということである。待ったなしのスケジュールのために苦肉の策で考え出した省略表現が、1990年代に入り海外から「クール」と言われはじめるようになった。その意味で日本のアニメ表現はテレビアニメ時代に突入してから独自の道を歩むようになったのではないかと思われる。
日本で不可能と思われていたテレビアニメ制作を成し遂げた事情については『ジャングル大帝』『宇宙戦艦ヤマト』の監督であった山本映一が書いた『虫プロ興亡記』に詳しい。当時の壮烈なエピソードは今読んでも面白い。またアニメにおける手塚治虫の業績に関しては津堅信之『アニメ作家としての手塚治虫』を読むことをお勧めする。テレビアニメの先鞭をつけた虫プロはその終焉(1973年倒産)まで話題の宝庫であった。
1963年以降、最高視聴率40.2%を記録した『鉄腕アトム』の成功を見てテレビアニメへの参入が一斉にはじまった。
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