アメリカに見る放送基準〜フィンシン・ルール1
アメリカにおける放送基準ということで、アメリカで放送の公共性という観点から1970年代から1990年代前半まで実施されていた「フィンシン・ルール」や「プライムタイム・アクセス・ルール」を紹介しておきたい。
「フィンシン・ルール」(fin/syn rules :financial interest and syndication rules)は一九七〇年にアメリカのFCC(連邦通信委員会)が制定した規制で、当時強大な力を持っていた三大ネットワークに対し、その独占的影響力を排してテレビ番組の供給に多様性と競争を導入することで、ローカルテレビ局や視聴者利益確保のためにテレビ番組のシンジケーション(独立局の放送をネットしたテレビ番組の配給システム)市場を振興させるという目的で導入された。
この規制はフィナンシャル・インタレスト・ルール(番組への出資・所有の禁止)とシンジケーション・ルール(番組販売の禁止)から構成されている。まずフィナンシャル・インタレスト・ルールは、ネットワークが番組制作事業者の制作する番組に対する所有権を取得することを禁止したものである。従ってネットワークは外部の番組制作事業者から放送権を購入することができるのみであり、自社制作以外の番組がシンジケーション市場で販売されても利益配分を受けることはできないというものだ。このように放送局から支払われる金銭の定義が明確であれば、拙著『アニメビジネスがわかる』でも指摘したような問題は起こらない。
日本において通常放送局からアニメの制作費が全額支払われることはない。実制作費に満たない金額を「制作費」というには無理があり、それは出資と見なすのが妥当である。もしそうならば放送局としては別途放映権料が設定されて然るべきであるが実際には支払われていない。そういう意味で現状放送局から支払われる金額は出資金、制作費、放映権料の何れも兼ねるオールマイティの性質を持つ。つまり日本ではアニメ番組に関して放送局から支払われる金額が、「出資金」か「制作費」か、はたまた「放映権料」なのか判然としないところがあるのだ。
放送局に対し自社の所有権を主張できるのはごく一部のアニメ製作会社である。そういった現状を鑑みると日本でもフィナンシャル・インタレスト・ルールのような明確な規定が必要であると思われる。
コメント