アニメ右肩上がりの要因5〜デジタル技術がもたらした生産性向上による牽引効果
生産性向上による牽引効果②〜デジタル化の胎動
前回述べたような慢性的人材不足に悩むアニメの制作現場にとって、制作工程のデジタル化が生産性の向上に大きな役割を果たしたのは確かである。
アニメにおけるデジタル化の取組は意外と早く、既に1960年代から日米で研究が開始されている。これは大学などの研究所レベルでの話だが、実は東映動画(東映アニメーション)もすでに1970年代初期からデジタル技術の研究に取りかかっていたのである。きっかけは、経済状況が落ち込み、人員削減を余儀なくされたことであった。有名な労働争議の頃のことである。
経済的な落ち込みは結果として一時的であったのだが、当時の今田智憲社長は行く末のことも考えた上で、再建策のひとつにコンピューターの導入を考えたのだ。そして、1974年には社内研究会を立ち上げ、1977年には正式に技術委員会プロジェクトを発足させている。
当時、コンピューターはまだパンチカードの時代である。もちろん社内に操作できる人間はいない。プロジェクトのメンバーはまず日本電子専門学校へ通ってコンピューターを学び、そして事業パートナーを探した。
協議相手は様々な分野に渡った。そのメンバーは、大日本スクリーン、日立、カネボウ研究所、東レ、三菱レーヨン、松下技研、ぺんてる電子、アンペックス、日本ビクター、住友商事、IBM、東通、池上通信機、松下電器、シャープ、横川電機、東芝、ソニー、富士写真フイルム研究所などの企業から、NYIT(ニューヨーク工科大学)やコーネル大学まで及んだ。
実に多彩なメンバーであるが、この中で東映動画がパートナーとして選択したのはIBMであった。
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