アニメ右肩上がりの要因5〜デジタル技術がもたらした生産性向上による牽引効果
牽引効果①〜労働集約型産業
アニメ右肩上がりの要因の最後になるが、デジタル技術がもたらした生産性向上による索引効果について述べてみたい。
アニメは典型的な「労働集約型産業」といわれているように制作に携わる人間は多い。例えば30分のテレビ・シリーズであっても、通常、監督以下300〜400名程度の人間がトータルで制作に参加している。
アニメ制作にはとにかく時間がかかる。たとえば30分番組(実際の正味制作分数はOP/EDを除けば20分超である)をキチンとつくろうと思えば、原作はすでにあるものと仮定して、脚本から完パケ納品まで3ヶ月はかかる。
もしこのペースで作品をつくるとしたら、ワンクール13話の制作に39ヶ月かかることになる。そのため通常のテレビアニメ制作では、幾つかも班を組んで、異なる話数を同時進行制作するのが普通である。当然自社だけではそうそうやり切れものではない。現実に全行程を自社でまかなえるアニメ製作企業は日本に1社もないのが現状である(海外でも同じだが)。そうした結果、シリーズを動かすためには300〜400人が必要になるという次第である。
「労働集約型」産業は論理的に大量の労働力を動員すれば時間を短縮できるはずであるが、アニメの場合、単なる労力ではなく才能と技術、さらには経験も求められるため、そう簡単に事は運ばない。「手」だけを増やせばいいという問題ではないのだ。これが慢性的人材不足の根本的な要因である。
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