アニメ右肩上がりの要因5〜デジタル技術がもたらした生産性向上による牽引効果
生産性向上による牽引効果③〜試行錯誤
数多くの候補と議論を重ねた東映動画であるが、最終的に提携相手として選んだのはIBMである。お互い猛烈に意見を戦わせ、ようやく1985年には、制作工程のデジタル化について具体的にシミュレーションできる段階まで話が煮詰まった。
そこで東映動画は1年間に100本のアニメをつくるには、ハードとソフトでどれくらいのコストがかかるのかをIBMに試算させた。しかし、出てきたのは、ハードとソフトで何と38億円という予想だにしない見積もりであった。これだと単純に一本当たり3,800万円になる。
この中には監督や脚本、絵コンテ、作画、さらにアフレコなどの費用は入っていない。それらのコストを入れると一話当たりの制作費は優に4,000万円を超す。1980年代中盤であれば、制作単価はせいぜい一話数百万強といったところではなかったのではないか。当然の如くIBMとのデジタル化プロジェクトは見送られることになった。
ところが、である。この東映動画のプロジェクト以前に既にデジタル化を実現させ、実際にアニメを制作している会社があったのだ。JCGL(ジャパン・コンピューター・グラフィックス・ラボ)である。1983年から放映されたフルCGアニメ『子鹿物語』を制作した会社だ。これはピクサーよりも早い。
コメント