アニメ右肩上がりの要因5〜デジタル技術がもたらした生産性向上による牽引効果
生産性向上による牽引効果④〜JCGLの挑戦
JCGL(ジャパン・コンピューター・グラフィックス・ラボ)は、現東京工科大学教授の金子満氏によって設立された会社である。フジテレビで『木枯し紋次郎』などの作品をプロデュースした、その後退社してエムケイという製作会社を立ち上げた金子氏は、『ウリクペン救助隊』『ラ・セーヌの星』『マルコポーロの冒険』『名犬ジョリィ』といったアニメ作品を次々とプロデュース。そんな氏が、世界でもまだ例がないコンピューターによるアニメづくりの挑戦するために1980年に創設したのがJCGLなのである。
金子氏は1946年に公開されたMGM製作の『子鹿物語』をアニメ化すべく原作権を取得した。氏がフジテレビ時代にMGMへ留学していたとことも幸いであった。こうして1983年から世界初のコンピューター・アニメ番組がスタートしたのである。
しかしながら、制作現場では、今からは想像できないようなPCの能力に悪戦苦闘する日々であった。それでも何とか2話目からは100%CG(2D)でつくられるようになったが、余りの生産性の低さに、それ以降、アナログのセルアニメによる制作を余儀なくされる。
さらにこの時期、JCGLは『SF新世紀/レンズマン』(川尻善昭監督)では3DCGに挑戦している。ピクサーがまだ影も形もなかった時代、この試みは画期的であった。残念ながらJCGLの挑戦は生産性の壁を乗り越えられず、アニメ業界にデジタル化の波を起こすことはできなかったが、日本のCG制作に先鞭をつけることになるのである。
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