海部美和『パラダイス鎖国』(アスキー新書724円+税)2〜邦楽より洋楽の方が偉かった時代
1990年代以降にデビューしたビジュアル系やJ-POP系バンドよりより一世代ちょっと上の私としては、ミュージシャン(ポップス、ロック系であるが)が英語の歌をうまく唄えるのは当たり前のことであった。これは日本における洋楽(ジャズ、ポップス、ロック)受容の歴史を考えると至極当然のことで、邦楽より洋楽の方が上(レベルが高い)という明治維新以来の歴史観に基づき洋楽をキャッチアップするというのが音楽界の基本的なスタイルであったからだ。
今では信じられないことであるが、1960年代までは洋楽のレコード(アナログ盤)の方が邦楽より値段が高かった(その後はdisk unionやタワーレコードできた実質的に洋楽の方が安くなるが)。洋楽と邦楽の差は物理的な価値面にもハッキリ現れていたのである(円が弱かったこともあったではあろうが)。
古くはディック・ミネなど戦前派のジャズシンガーから、山下達郎、桑田圭祐、かろうじてBOOWYの世代くらいまでは英語歌詞の発音に関してはいい。それは当然のことで、彼らは英米のミュージシャンの音楽に感動しそれをコピーして育ったからである。
古くは日野皓正からはじまり、矢沢永吉、久保田利伸などはアメリカに居を構えビルボードに挑戦した(ザ・ピーナッツ、ピンク・レディ、松田聖子、ドリカムなどの女性陣もいるが)。氷室京介はロスの豪邸に住んでいる。刷り込まれた洋楽に対する憧れは決して止むことはないのである。
それに対して1990年以降にデビューしたバンドは明らかに邦楽指向だ。彼らは洋楽を指向した世代のミュージシャンに憧れながら育ったのである。
コメント