海部美和『パラダイス鎖国』(アスキー新書724円+税)1〜鎖国化する日本文化
最近読んだ本でアニメを含む日本の文化状況を語って面白かった本が海部美和氏の『パラダイス鎖国』であった。グローバル化が叫ばれる中、日本はどんどん国際化しているかのような印象があるが実際は内向きになっており、鎖国化が進んでいるという趣旨である。
日本が鎖国化しているとしている現象として挙げられているのは、日本人が海外旅行に行かなくなった、J-POP+邦画の躍進が躍進したといった風俗文化面から、海外で全く影響力を持たない日本の携帯電話の内弁慶振りといった産業面にまで及ぶ事象であるが、確かにアニメの状況を考えても自国製で事足りており氏が言うこともうなずける。
実は十数年前にもなるが、私もひょっとして日本は鎖国化しているのではと思っていた。そのきっかけになったのが1990年代以降にデビューしたビジュアル系やJ-POP系バンドの歌である。これらバンド系のミュージシャンにおしなべて言えることは、ファンには大変申し訳ないが英語の歌詞の発音がひどいということであった。(キティちゃんをキテイと発音するような感覚であろうか。おそらく英詩、英語曲さらに言うならば洋楽に対する考え方が根本的に違うからだと思うし、聞いている層もそれが気にならないのであろう)。
要するにジャパニーズ・イングリッシュなのだが、1960年代から70年代の音楽を聴いて育ち、一時期音楽界に身を置いた人間としては考えられなかったような現象である(これ以前からアニメはとっくに鎖国化していたが、余りに自明のことであったため意識の表層には浮かび上がらなかった)。少なくともそのレベルの発音で英語歌詞を平気で唄うプロのミュージシャンは有り得ないというのがそれまでの世代の常識であった。
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