氷川竜介『アニメビジネス45年の歴史』(月刊アスキー連載)〜アトムのマジックプリントに見た未来
氷川さんの小冊子『アニメとTV放送45年間の果てに』はアニメとメディアに関して長年考え続けてきたことを述べたもので、私のテーマとピッタリと重なる。日本のアニメにとって最適メディアであったテレビとの関係、そしてそれが45年を経てどのように変化したのか、また今後どうなってゆくのかについての考察である。アニメビジネスを考える上で実に示唆に富んだ内容となっている
実はこの氷川さんの『アニメとTV放送45年間の果てに』については、大変重要なテーマだと思ってこのブログで取り上げようとして数回分書いてみたのであるが、論点が論天和だけに中途半端な取組はできないと思って途中でストップした。そこに今回の連載がはじまった次第である。この連載がどれくらいの分量になるのかはわからないが、終了後は是非一冊の本としてまとめて欲しいと願う次第である。
さて肝心の連載の内容であるが、第一回目は1963年スタートの『鉄腕アトム』を中心として、テレビアニメというビジネスが成立した社会的な背景、経緯についての言及である。当時不可能と思われていたテレビ制作へのドアを開いたのは手塚治虫であるが、その蛮勇とも思える行動は実は当時の時代的要請に適っていたと指摘。しかし、氷川さんは日本のアニメが社会に受容されて行く過程を時代状況だけではなく、その表現手法からも読み解いていく。
「『アトム』と聞いて真っ先に思い出すのは物語ではなく、明治製菓の「マーブルチョコレート」に入っていたマジックプリントのはずだ」と氷川さんは書いているが、当時を知る人間としては全くその指摘通りであった。そのシール欲しさにチョコレートを買っていたようなもので、実際それで虫歯になってしまった。
光沢のあるセル画に描かれたアニメはツルツルと輝く質感があり、それがまだ貧しかった日本人とって未来を示す希望と感じられたと氏は言う。確かに当時の子どもたちに取ってマジックプリントが持つツルツルした質感はリッチな(そんな言葉はなかったが)感じがしたものだ。なるほどマジックプリントを見て未来を感じていたという訳だ。
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