氷川竜介『アニメビジネス45年の歴史』(月刊アスキー連載)〜氷川さんの仕事
創生期のテレビアニメに対する氷川さんの洞察はまだ続く。アニメとスポンサーの関係性、アニメが怪獣と特撮ものから受けた影響、また、当時のテレビアニメの企画が現在のマルチメディア展開というパターンを内包していたとも指摘している。どれも示唆に富んだ内容である。今回は60年代についての状況分析で、次号は70年代についてとのことである。
尚、最近氷川さんはanimaxではじまった「とっておき Aニュース」にコメンテーターとして出演されている。最初はよくあるアニメの情報番組かと思っていたら、アニメ・コミックカルチャーを中心としたテレビ・映画・音楽・ゲーム・書籍・家電・グッズを取り上げるということで、実際かなり社会的・文化的要素を含んでいて面白かった。
その番組の中で興味を引かれたのは、千葉大学が保存していた中間素材(イメージボード、レイアウト、原画、セルなど)をディズニーに返還したという話題である。これは、千葉大学が半世紀ほど前に日本で開かれたディズニーの展覧会で使用した展示素材(何と1932年に製作されアカデミー賞を受賞した世界初のカラーアニメーション『花と木』の素材が日本にあったのだ!)を2006年の東京都現代美術館「ディズニー・アート展」をきっかけに所有者であるディズニーに返却したということだが、このニュース自体は既報済みのものであった。
しかし、その保管のお礼にディズニーが千葉大学に1億円支払ったということはこのニュースを聞くまで知らなかった。サザビーに出せばそれ以上の高額で取引されたであろうが、中間素材に1億円出すという感覚に彼我のアニメビジネスの違いを見る思いであった。「とっておき Aニュース」はアニメカルチャー系情報番組としては出色の内容である。
http://journal.mycom.co.jp/news/2008/04/28/001/index.html
さらにもうひとつ。氷川さんがかかわった『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 全記録全集』についてである。全部で28人の関係者にインタビューをしてそれをまとめたということであるが、文字数にして30万字、A4だと300枚近くになる原稿量であったと聞く。出版社はヱヴァンゲリヲンの製作元のカラーであるから、つくる側とまともに向き合って仕事をしたのであろう。苦労の程が偲ばれる大変な労作である。
日本のアニメを語る第一人者である氷川さんの仕事に今後も注目していきたいと思っている。
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