『ハイエク 知識社会の自由主義』池田信夫(PHP新書700円税別)
社会主義的な計画のもとで行われた「情報スーパハイウェイ」が失敗しボランティアの技術者がつくったインターネットが勝利した理由
本書は経済書の範疇と言えるものであるが、池田氏の著作権に対する考え方が前回紹介した著作以上にダイレクトに表れているので紹介したいと思う。 ハイエクはマーガレット・サッチャーやドナルド・レーガンの経済政策の思想的支柱となった学者であるが、存命中は「進歩的知識人」から「反共」や「保守反動」というレッテルを貼られ嘲笑されていた。しかし、死語15年余りが経過し、次第にその思想の妥当性が証明され評価が高まりつつある。 ハイエクは社会主義や新古典派経済学に共通する「合理主義」よ「完全な知識」という前提を攻撃し続けた。人間が計画したとおりに合理的な行動を取り理想的な社会や経済体制が実現されるというような考え方を真っ向から否定したのである。確かに人間はこちらの思惑通り動いたりはしない。合理的行動とはなかなか縁遠い生物である。 池田氏はハイエクの「不完全な知識にもとづいて生まれ、つねに進化を続ける秩序が、あらゆる合理的な計画をしのぐ」という予言をインターネットが証明したと述べる。計画的、合理的だと思われた「情報スーパハイウェイ」は失敗しボランティアの技術者がつくったインターネットが勝利した。情報を一部のエリートに集約させる体制では膨大な情報をもはや処理しきれない。情報を持つ個人が分権的に意志決定を行うしかないのである。 といった紹介を書いていたら結構な字数になってしまった。インターネットにおける池田氏の著作権思想については次回触れてみたい。
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