『ハイエク 知識社会の自由主義』池田信夫(PHP新書700円税別)
知的財産権という欺瞞
氏はハイエクを引用しながら次のように述べている。
「著作権は他人が自分の著作を利用して新しい表現を行う自由を侵害する権利である。だから表現の自由を保障した近代国家の憲法に反するばかりではなく、知識の利用や発展を妨げることによって、結果的には社会全体の利益を損なうおそれが強い」
おそらくインターネットに関する著作権の見解で現状最も過激な意見であろう。特にコンテンツホルダーなどの著作権者から見たら何を血迷っているのかと思われる言葉である。
しかしながら、検索エンジンも違法とされてしまう現状の著作権法がインターネットのイノベーションを妨げ世界に後れを取る要因となる側面を持っているのも確かである。このままの状況が続けば周回遅れになるのは確実である(もうなってるかも知れないが)。
この問題を避けてインターネットでコンテンツを大量に流通させるのは困難であり、池田氏は根本的な解決のために知的財産権の位置づけを明確にすべきであると述べている。ハイエクは特許や著作権について、「こうした分野に有体物と同じ財産権の概念をまねて適用することが、独占がはびこるのを大いに助長しており、この分野で競争が昨日するのは抜本的な改革が必要であることは疑問の余地がないように思われる」と述べ著作権を普通の財産権として保護すべきだと主張する。
大変な論議を呼びそうな池田氏の著作権論議であるが一考の余地は十分あるだろう。
さてさて著作権法を含む日本の法律であるが独仏方よりもさらに強力な大陸法型であるそうだ。複雑過ぎて官僚にしかつくれない代物となっているが、その法律改正は「コンピュータでいえば、オーサリングツールやデバッガで自動化されるような定型的な仕事だ。優秀な官僚のエネルギーの大部分が、老朽化したプログラムの補修に使われている現状は、人的資源の浪費である」という池田氏の一文を見てすぐに思った。
「優秀な放送局員のエネルギーの大部分が、(日本ローカルの)世界のナベアツのスケジュール取りに追われている現状は、人的資源の浪費である」
失礼とは思うがテレビは視線をもっと高く持って是非世界を目指して欲しい。
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