『過剰と破壊の経済学』池田信夫(アスキー新書724円税別)
インターネットにおけるコンテンツ配信のボトルネックは著作権法である
『電波利権』の著者がIT産業における「ムーアの法則」の影響について述べたものであるが、その論旨自体とても刺激的で興味深い。コンテンツ産業の人間も読んでおくべき一冊であろう。
インターネットにおけるコンテンツ配信について筆者は「ボトルネックは通信回線や電波ではなく、コンテンツ」であると言い切る。つまり、インターネットでなかなかコンテンツが配信されない理由は「配信技術でもなければ、ネット配信規制でもなく、著作権法なのだ」と言い切る。
既に海外ではYouTubeをつかった「放送」が解禁されている。放送局の膨大な映像資産を享受できるかできないかによって確かに池田氏が述べるように製作面などでの生産性は大きく異なるであろうし、国民経済への影響も大きいはずである。
インターネットにおけるコンテンツ流通はもはや避けられない時代に突入している。マイスペースは、ユニバーサルミュージック、ソニーBMG、ワーナーミュージックと提携。9月から、この3社の音楽カタログに含まれる全ての楽曲を、マイスペースのサイト上から無料でストリーミング配信する見込みであるが、世界4大レコード会社のうち残されたEMIがこの仲間に加わるのは時間の問題と見られている。
これらの会社は定額制のライセンス料でマイスペースへ楽曲を提供するものと思われる。もし日本においてコンテンツのインターネット流通規制が解けた場合、おそらくこのような定額ライセンス料が導入されることが予測されると著者は述べている。果たしてその日はいつ来るのか。またそうなった時コンテンツホルダーがどのような施策を考えるのか興味ぶかい。
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